贈与税というのは、もともと相続税の補完として位置づけられていたため、「相続税よりも 税率が高い」という印象から有効な手段ではないと勘違いしている人が多いようです。確かに税率は高いのですが、年110万円の基礎控除があり、年数をかければ、節税の効果も出てきます。
例えば、子供が二人いて、20年かけて、毎年限度額の110万円まで贈与をすれば、4,400万円までの財産は税金がかからないのです。
とは言え、最初から4,400万円の贈与をする意図であったと税務署にみなされると、初年度に全体を一体として贈与税の課税がされるため、注意が必要です。これを「連年贈与」と呼びますが、贈与税は税率が高いので、多額の税額が課されてしまいます。
先述のように、ある程度年数をかけて贈与をしていく場合、連年贈与認定を避けるようにしなければなりません。そのためには下記のことを注意して、進める必要があります。
より財産が多い方、贈与に年数をかけられない方は、年110万円の贈与では、物足りないと思われるかもしれません。例えば、相続税の税率が50%と予想されるような場合に、年間500万円の贈与を行うと贈与税は約50万円で実質10%の税負担となります。
つまり、相続まで待てば50%もの相続税がかかるところを、生前贈与により10%の贈与税の負担で済ませてしまうことができるのです。
もちろん、事前に税理士に試算してもらった上で、実際の贈与額・贈与を行う年数等は、資産の内容、現金の有無、キャッシュフロー等を勘案して、個別に考えていかなくてはなりません。
当センターでご紹介いたしますので、お気軽にお問合せください。
ここでは、相続時精算課税制度の一般的な説明をさせていただきます。
相続時精算課税では、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫への贈与であれば、2500万円までは贈与税がかからなくなります。
相続時精算課税を選択した贈与者ごとに、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産評価額から2,500万円(累計2,500万円に達するまで複数年で控除が可能です)を控除した残額に対して贈与税がかかります。(贈与税の期限内申告書を提出する場合のみ、特別控除することができます)
また、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。贈与の累計額が2,500万円を超える部分には、一律で税率20%で贈与税が課税されます。ここで支払った贈与税は相続税の前払いの性格を持ちます。
将来相続が発生した時に、相続時精算課税制度により贈与をした財産は、相続財産に含まれ相続税が課税され、贈与税を支払っている場合には、その贈与税額を相続税額から差し引くこととなります。
財産を贈与した人(贈与者)・・・・・60歳(注1)父母または祖父母
財産の贈与を受けた人(受贈者)・・・20歳(注2)以上の子である推定相続人(注2)
(注1)年齢は贈与の年の1月1日現在で判定します。
(注2)子が亡くなっている場合、20歳以上の孫を含みます。
「相続時精算課税制度」を一度選択してしまうと、従来の「暦年課税制度」には戻せません。
相続時精算課税制度 | 暦年課税制度 | |
---|---|---|
贈与者 | 60歳以上 (住宅取得資金の場合には制限なし) |
年齢制限なし |
受贈者 | 20歳以上の贈与者の推定相続人 (子、もしくは孫) |
年齢制限なし |
基礎控除 | 限度額2,500万円を複数年にわたって利用 | 年110万円 (毎年利用可) |
税率 | 一律 20% | 10%〜50% (6段階の累進課税) |
相続時の取扱い | 贈与財産を贈与時の価額で相続財産に合算して相続税を計算し、相続税額から相続時精算課税による贈与税額を控除します。控除しきれない贈与税は還付されます。 | 相続開始前3年以内の贈与財産は、贈与時の価額で相続財産として加算します。相続財産としてえ加算された贈与財産に対応する贈与税額がある場合には、相続税額から控除し、控除しきれない部分は切り捨てます。 |
20歳以上である子(または孫)が、親(または祖父母)から住宅取得等資金の贈与を受け、その資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに、一定の家屋の取得又は一定の増改築に充てて、その家屋を同日までに居住の用に供するか又は同日後遅滞なく居住の用に供した場合には、相続時精算課税を選択することができ2,500万円の相続時精算課税の特別控除額のほかに、1,500万円の住宅資金特別控除額を控除することができます。
(なお、特別控除枠は平成23年には、1,000万円に縮小されることとなっています。)
平成26年12月31日までに、両親などから家を建てる目的の資金を贈与してもらった場合、贈与税が軽減されます。贈与税が非課税となる金額も年間110万円の基礎控除に加えて、住宅資金の非課税枠が500万円あります。
昔は、初めての家づくりを応援するものでしたが、ここ最近は買い替え、建て替え、増改築 でも、上記の特例が使われるようになっています。つまり、610万円(基礎控除110万円+住宅取得等資金の贈与非課税枠500万円)までの贈与であれば、住宅取得資金であれば税金がかからないということになります。
この贈与の特例を受けるために、「贈与を受ける入の主な条件」「贈与をする人の主な条件」「取得する住宅の主な条件」をクリアする必要があります。
また、期限内に贈与税の申告する必要があります。
夫婦間の贈与の特例は、一定の条件を満たせば、2,110万円(基礎控除枠110万円+配偶者控除枠2,000万円)まで贈与税が発生しないという配偶者控除が受けられるものです。
婚姻期間が20年以上の夫婦で、贈与の対象が居住用不動産等で あること以外に、いくつか条件があります。
以下の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要となります。
贈与する人と、贈与を受ける人との合意内容を契約で交わすのが死因贈与契約です。贈与する方の意向を、贈与を受ける方は合意しているとみなされますので、贈与した方が亡くなった後、その意向を放棄することが出来ないのが特徴です。
これに対して、実は遺言書は執行者を付けたとしても、相続人全員が遺言書に反する内容で協議し、合意した場合、無理矢理実行させることは出来ません。もし、意思を確実に実現したい場合は、死因贈与契約も有効と言えます。さらに「負担付」というのは、贈与をする方が、贈与を受ける方に、何らかの義務・負担を強いることです。
贈与を受けた方は、相続が発生するまで、その義務・負担を全うし、利益を受けるということになります。
具体的には、“今後の身の回りの世話を続けて欲しい”、または、“同居して面倒を見て欲しい”といったケースが多く、遺言書よりも実行度合が強く、成年後見よりも自由度が高いという意味で、使い勝手の良い制度になっています。
死因贈与の手続きにおいて、注意をしなければならないのは、契約内容の実行に疑問が発生したり、相続人間でトラブルが出ないようにしておくことです。契約内容を明確に記載しておくことが大切で、
が特に重要です。
資産が不動産の場合は、登記簿の記載に従って正確に記載しましょう。 また、預貯金は「銀行名」「口座の種類・番号・名義人」を明示します。
死因贈与契約も遺言書と同様に、執行者を指名することが可能です。通常、死因贈与契約の内容は、他の相続人と利害が対立することが多いため、司法書士などの専門家を指定しておけば、執行が確実に進められることでしょう。
死因贈与契約というのは、一般的な贈与契約と同じ類のものであり、書面になっていないと、贈与をするかたが撤回することが可能です。贈与を受ける場合、負担をするわけですから、撤回されないために書面にしておくことが大切です。
ちなみに、死因贈与という存在が法的にあるわけではありません。言葉として定着しつつありますが、一般的な贈与に「贈与者の死亡により、その効力が生じる」という条件合意が付いているだけです。贈与契約書には公正証書を利用するのが最も安全かつ確実と言えるでしょう。
負担付死因贈与の取り消しについては、その負担が履行されたかどうかで、大きく違ってきます。まず、負担が履行されていない場合、遺贈の取り消しの規定により、取り消すことが可能です。また、負担のない死因贈与契約の場合は、これもいつでも取り消すことが可能です。
しかし、負担が全部または一部履行された場合は、原則として取り消すことができません。 ただし、取り消すことがやむをえない「特段の事情」があれば、遺贈の規定により取り消すことができます。
死因贈与契約の特徴を端的に整理すると、
となります。
遺言書における遺贈とは異なる法律行為です。贈与する方が亡くなった場合、効力が発生するのですが、ご自身の財産を処分することになりますので、意思が明確であることが条件になるでしょう。書面がしっかり作成されていれば、贈与を受ける人も承諾しているため、遺贈よりも実行性に優れていると言われているのです。
※ただし、遺言書と同じように、遺留分減殺請求の行使は受ける可能性があります。遺留分を考慮した設計が必要となるでしょう。