司法書士に依頼できる相続手続きは?その範囲を徹底解説
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
相続手続を司法書士に依頼しようかと考えたとき、どこからどこまで依頼できるのか、その範囲を知っておく必要があります。
相続に関する手続では、司法書士以外にも弁護士や税理士などの専門家が関係することもあるため、対応してもらえる範囲や内容によって相談先を選ぶべきといえます。
そこでこの記事では、
- ・相続手続で司法書士ができること
- ・依頼内容によって選ぶべき専門家と依頼したほうがよい例
- ・相続手続を司法書士に任せたほうがよいケース
について詳しく説明していきます。
目次 [ 閉じる ]
相続手続で司法書士ができること
相続が発生したとき手続するべきことはとてもたくさんありますが、司法書士が対応できること・できないことは、それぞれ以下のとおりです。
司法書士で対応できること | 司法書士では対応できないこと |
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【生前対策】
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【相続手続き】
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司法書士で対応できること |
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【生前対策】
【相続手続き】
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司法書士では対応できないこと |
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このように司法書士が可能とする手続は多岐に渡りますが、これはその一部でありすべてではありません。
司法書士はご覧いただいたとおり、生前や死後に関わらず相続に関する手続について幅広く対応できるため、迷ったときにはまずは司法書士に相談することをオススメします。
ただ、相続人同士で遺産を巡る争いが起きている場合などは、司法書士では対応できないこともあります。
そこで、状況に応じてまず相談したほうがよい専門家を選んだほうがよいといえるでしょう。
依頼内容によって選ぶべき専門家と依頼したほうがよい例
相続に関する手続きを行う専門家は、
- ・司法書士
- ・弁護士
- ・税理士
- ・行政書士
の4つです。
それぞれ対応可能とする範囲に次のような違いがあります。
この表だけみても、はじめての相続ではどの専門家がどんな業務に対応してくれるのかわかりにくいと思います。
専門家によって得意とする分野は異なるため、今解決させたい問題に応じて、ピンポイントで対応してくれる専門家に相談するようにしましょう。
以下、それぞれの専門家の特徴や、依頼した方がよいパターンについてご説明します。
司法書士の特徴と依頼したほうがよいパターン
司法書士は登記の専門家であり、裁判所に提出する書類作成や生前対策など、相続に関してとても幅広い知識を保有し業務として行うことが可能という特徴があります。
そのため、司法書士に依頼するとよいパターンとは、
- ・相続する財産に不動産が含まれるとき
- ・相続人の間で争いが起きていない
- ・費用をかけずに相続放棄を依頼したい
という3つです。
それぞれ詳しくご説明します。
相続する財産に不動産が含まれるとき
相続する財産に不動産が含まれるとき名義変更の手続が必要ですが、登記は司法書士の独占業務です。そのため登記に関する手続は司法書士に相談しましょう。
発生した相続の約半分は財産に不動産が含まれるとされていますが、仮に他の専門家に相続手続を依頼しても、不動産の名義変更までは対応してもらえません。
別途、司法書士に依頼が必要となるため、最初に司法書士に相続の相談・依頼をしたほうが、手間や時間だけでなく余計な費用をかけずに済みます。
相続人の間で争いが起きていない
司法書士は相続に関する幅広い業務に対応できますが、相続人同士でトラブルが発生しているときには、弁護士に依頼することが必要となります。
もし相続人の間で特に争いなどが起きていない場合には、弁護士よりも司法書士に依頼したほうが、費用を抑えてほとんどの相続手続に対応できます。
また、司法書士は相続手続の最初の工程といえる財産調査から各種の名義変更まで担当するため、相続手続において税理士や弁護士などの専門家と連携を取る機会も多くあります。
そのため司法書士の業務範囲ではない手続が必要になったときでも、相続に強い他分野の専門家を紹介してもらいやすいことがメリットです。
なお、相続が発生したときにトラブルを起こさないための対策を知りたいなら、以下の記事を参考にしてください。
よくある相続トラブルと対処法について大阪相続相談所の司法書士が解説費用をかけずに相続放棄を依頼したい
相続放棄の依頼が可能なのは司法書士と弁護士ですが、司法書士は相続放棄に関する書類作成の対応が可能であるのに対し、弁護士であれば代理人としてすべての手続を任すことができます。
ただ、相続放棄は書類のやり取りのみで手続が完了することが多いため、費用を安く抑えて手続したいなら司法書士がオススメです。
弁護士の特徴と依頼したほうがよいパターン
弁護士は、一方の代理人として言い分を整理して代弁することが仕事です。
紛争がおきたとき、依頼人に代わって交渉できるのは弁護士だけなので、相続人の間で争いが起きているときには弁護士を頼ったほうがよいといえます。
具体的に弁護士に依頼したほうがよいパターンとは、
- ・相続人間で争いが起きている
- ・遺された遺言書の内容に納得できない
- ・遺留分・寄与分の請求を考えている
といったときです。
それぞれ詳しくご説明します。
相続人間で争いが起きている
相続が発生したとき、争いごとがなくスムーズに相続人同士の話し合いが進めばよいですが、必ずしもそうではなく遺産を巡る争いが起きることもあります。
相続人同士の話し合いではまとまらず、遺産分割調停や審判などが必要という場合には、弁護士でなければ対応できませんので、弁護士に相談しましょう。
遺言書に納得できない
亡くなった方が生前に遺言書を作成していたものの、その内容に納得できず無効を主張したいときにも、弁護士に相談したほうがよいといえます。
遺言が無効であると主張するためには相続人間で話し合いが必要ですが、当人同士では話しがまとまらず調停が必要になったり訴訟になったりということもあるため、まずは弁護士に相談したほうスムーズです。
遺留分・寄与分の請求を考えている
遺留分・寄与分を請求したいという場合にも、相続人と交渉することが必要になり、トラブルが起きる可能性も高いため弁護士に相談したほうがよいといえます。
なお、遺留分について詳しく知りたいなら、以下の記事を参考にしてください。
遺留分とは?遺留分の計算方法や請求できる相続人の範囲について税理士の特徴と依頼したほうがよいパターン
税理士は税の専門家であり、納税者の納税額を算出する申告納税制度を推進する役割を担っています。
相続手続のうち相続税の申告は税理士しか対応できないため、
・遺産が相続税の基礎控除を超えるとき
には税理士に相談しましょう。
遺産が相続税の基礎控除を超えるとき
相続税が課税されるのは、
基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
を超える遺産があるときです。
遺産総額が基礎控除の範囲内におさまれば、相続税は課税されません。
たとえば相続人が1人の場合の基礎控除額は、
3,600万円=3,000万円+600万円
となります。
遺産の総額からこの基礎控除(3,600万円)を差し引いた分が、課税対象となる額です。
相続税の申告を必要とするのは4%程度といわれていますが、もしも基礎控除額の範囲に遺産総額がおさまらない可能性があるときは、財産調査が必要となります。
司法書士に財産調査を依頼し、遺産総額が基礎控除額の範囲に収まらないときは税理士に相談するとよいでしょう。
なお、相続税の基礎控除に関して詳しく知りたいなら、以下の記事を参考にしてください。
相続税の仕組みと申告行政書士
行政書士は、官公署に提出する許認可申請書類を作成する、身近な街の法律家ともいわれる専門家です。
低コストで書類作成の依頼ができるメリットがありますが、登記申請書類の作成は行政書士では対応できません。
そのため、
・相続手続の一部分のみ依頼したいとき
には行政書士に相談できます。
相続手続の一部分のみ依頼したいとき
相続手続で行政書士にしか対応できない業務はないため、
- ・戸籍収集
- ・遺産分割協議書
- ・預金解約
など、一部分のみ費用を抑えて依頼したいときに相談するとよいでしょう。
ただし遺産に不動産が含まれており相続登記が必要な場合には、別途、司法書士に登記申請手続を依頼することになるため手間や費用が余計にかかる可能性があります。
相続手続を司法書士に任せたほうがよいケース
司法書士・弁護士・税理士・行政書士、それぞれの専門家が得意とする分野についてお話しましたが、結局のところ誰に相談するべきなのかわからないときは司法書士にまず相談してみましょう。
相続手続を司法書士に任せたほうがよいケースとして、
- 1.相続手続する手間や時間を省きたい
- 2.相続財産の種類が多い
- 3.相続人に疎遠の人や関係が薄い人が含まれる
- 4.相続した不動産が遠方にある
- 5.二次相続も検討しながら手続したい
- 6.不動産の権利関係が複雑になっている
などが挙げられます。
それぞれ詳しく説明していきます。
相続手続する手間や時間を省きたい
相続が発生したときに必要となる手続は多岐に渡るため、これらをすべて単独で行おうとするとかなりの手間や時間がかかります。
仕事がある方は日中、有給休暇を取得し金融機関や公的機関に何度も足を運ばなければなりませんし、高齢の方などは身体に負担をかけるだけでなくわかりにくい手続に手間取ってしまう可能性もあります。
この場合、司法書士であれば相続に関する幅広い業務を対応できるため、時間や手間をかけることなく相続手続をすすめることができます。
相続財産の種類が多い
亡くなった方の遺産が不動産のみという場合もあれば、預金や有価証券など種類が多いときもあります。
相続手続は遺産の種類ごとに行う必要があり、不動産の数が多いときにも登記申請の手間が増えますので、司法書士に相談したほうがよいでしょう。
相続人に疎遠の人や関係が薄い人が含まれる
身近な家族だけが相続人であれば、遺産分割協議もスムーズに進めることができるでしょうが、疎遠の人や関係が薄い人が含まれるときには、連絡先さえわからないといった問題が起きることがあります。
仮に連絡先は確認できたとしても、普段から付き合いがない相続人から突然連絡をもらうことになるため、冷静に話ができなくなることも考えられるでしょう。
このような場合、司法書士なら財産の管理運用処分が可能なので、中立・公平な立場で財産分配を任せることが可能です。
相続した不動産が遠方にある
遺産に不動産が含まれるものの、その物件が遠方にあるときには司法書士に依頼したほうがよいでしょう。
相続登記は不動産を管轄している登記所で申請手続する必要がありますが、遠方の法務局に直接出向くには交通費など費用がかかります。
仮に書類にミスがあったときには、修正するために遠方の法務局に出向くのは大きな手間となり、費用や時間もかかることになるでしょう。
しかし司法書士に依頼すれば、全国の法務局にオンラインによる手続が可能となるため、手間や時間をかけずに相続登記を進めることができます。
二次相続も検討しながら手続したい
たとえば先に父親が亡くなり母親と子がその遺産を相続します(1次相続)。その後、母親が亡くなったことで母親の遺産を子が相続すると、二次相続となります。
二次相続では両親の遺産がすべて子に引き継がれることになりますが、1次相続のときに相続税を抑えて遺産分割しても、二次相続が発生したときには税負担を大きくしてしまうこともあります。
そのため二次相続も踏まえた上で相続手続を進めたいという場合には、司法書士に相談しながら遺産分割協議を進めることが必要です。
不動産の権利関係が複雑になっている
相続する不動産の権利関係が複雑なケースとして、
- ・相続人が多く相続関係が複雑になっている
- ・亡くなった被相続人(相続される人、相続の開始にあたっては亡くなった人)の住所と登記簿上の住所が異なるもののつながりを証明できない
- ・抵当権など担保が設定されたままになっている
- ・不動産の名義が共有
などが挙げられます。
このような複雑な権利関係の不動産については、登記の専門家である司法書士に相談したほうが安心です。
まとめ
状況に応じて選ぶ専門家は異なりますが、司法書士なら相続で必要となる業務のほとんどを担当することができます。
もしもどの専門家に相続手続の相談をすればよいか迷ったときには、幅広い業務に対応できる司法書士にまずは相談することをオススメします。
なお、グリーン司法書士法人グループであれば初回の相談は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。
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- 【保有資格】司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
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- 全国司法書士法人連絡協議会 理事