負担付死因贈与契約とは?利用方法や注意点を解説
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
負担付死因贈与契約とは、贈与をする方が贈与を受ける方に何らかの義務や負担を強いることができるもので、死因贈与契約に負担が付いた契約です。
死因贈与契約とは、贈与する人と、贈与を受ける人との合意内容を契約で交わすもので、贈与者の死亡によって効力が発生する贈与です。
贈与する方の意向を、贈与を受ける方は合意しているとみなされますので、贈与した方が亡くなった後、その意向を放棄することが出来ないのが特徴です。
これに対して遺言書は執行者を付けたとしても、相続人全員が遺言書に反する内容で協議し、合意した場合、無理矢理実行させることは出来ません。
なのでもし、意思を確実に実現したい場合は、死因贈与契約が有効と言えます。
さらに贈与をする方が、贈与を受ける方に、何らかの義務・負担を強いたい場合は「負担付死因贈与契約」が有効です。
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負担付死因贈与契約を利用するケース
負担付死因贈与契約を利用すると、贈与を受けた方は相続が発生するまで、その義務・負担を全うし、利益を受けるということになります。
どのような負担にするかは、その契約ごとで違いますが、よくあるのは「今後の身の回りの世話を続けてほしい」や「同居して面倒をみてほしい」などがあります。
負担付死因贈与契約は、遺言書よりも実行度合が強く、成年後見よりも自由度が高いので、亡くなるまではこうしてほしいなどの希望がある場合には使いやすい制度です。
その他にも下記のようなケースで利用されることがあります。
- 家を贈与する代わりに、残りの住宅ローンを支払って欲しい
- 土地を贈与する代わりに、自分が死ぬまでは無償で使わせて欲しい
- 車を贈与する代わりに、借金を返済して欲しい
- 毎月〇万円贈与する代わりに、ペットを飼育して欲しい
負担付死因贈与契約の注意点
死因贈与の手続きにおいて注意をしなければならないのは、「契約内容の実行に疑問が発生」したり、「相続人間でトラブル」が出ないようにしておくことです。契約内容を明確に記載しておくことが大切で下記の2点が特に重要です。
- 贈与の対象資産
- 負担の内容
資産が不動産の場合は、登記簿の記載に従って正確に記載しましょう。また、預貯金は「銀行名」「口座の種類・番号・名義人」を明示します。
死因贈与契約も遺言書と同様に、執行者を指名することが可能です。
通常、死因贈与契約の内容は、他の相続人と利害が対立することが多いため、司法書士などの専門家を指定しておけば、執行が確実に進められることでしょう。
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負担付死因贈与契約は、公正証書を利用
死因贈与契約というのは、一般的な贈与契約と同じ類のものであり、書面になっていないと、贈与をする方が撤回することが可能です。
負担付死因贈与契約で贈与を受ける場合、負担をするわけですから、撤回されないために書面にしておくことが大切です。
ちなみに、死因贈与は法的にはありません。言葉として定着しつつありますが、一般的な贈与に「贈与者の死亡により、その効力が生じる」という条件合意が付いているだけです。
贈与契約書には公正証書を利用するのが最も安全かつ確実と言えるでしょう。
負担付死因贈与契約の取り消し
負担付死因贈与契約の取り消しについては、その負担が履行されたかどうかで、大きく違ってきます。
負担が履行されていない場合
負担付死因贈与契約の負担が履行されていない場合は、遺贈の取り消しの規定により取り消すことが可能です。
また、負担のない死因贈与契約の場合は、これもいつでも取り消すことが可能です。
負担が履行された場合
しかし、負担付死因贈与契約の負担が全部または一部履行された場合は、原則として取り消すことができません。
ただし、取り消すことがやむをえない「特段の事情」があれば、遺贈の規定により取り消すことができます。
負担付死因贈与契約と遺贈の違い
遺贈は遺言書によって贈与を行い、贈与する人が亡くなった際に効力を発揮する点では死因贈与契約と同じです。
しかし死因贈与契約は両者の合意により契約しますが、遺贈は贈与する人の一方的な意思であり、贈与を受ける人との契約ではない部分が違います。
死因贈与契約や負担付き死因贈与契約と遺言書による遺贈は死後に効力を発揮する点は共通していますが、別の法律行為となります。
実効性について
遺贈は、遺言書で遺言執行者を付けていても、協議により相続人全員が遺言書の内容に反対し、合意してしまうと無理矢理に遺言内容を実行することはできません。
しかし、負担付死因贈与契約は、正しく書面を作成していれば、贈与を受ける人も合意しているため、贈与する人の意思を確実に実行することができます。
上記のことから、負担付死因贈与契約の方が遺言書による遺贈よりも実効性が優れているといえます。
ただし、死因贈与契約も遺贈と同じように、遺留分侵害額請求権の行使を受ける可能性があるので、遺留分に考慮した内容にしておきましょう。
死因贈与契約の特徴
死因贈与契約の特徴を端的に整理すると、以下の3点となります。
- 贈与を受ける人の承諾が必要
- 契約とともに権利義務が発生する
- 原則として取り消し・一方的な破棄は不可
死因贈与契約は遺言書における遺贈とは異なる法律行為です。
贈与する方が亡くなった場合、効力が発生するのですが、ご自身の財産を処分することになりますので、意思が明確であることが条件になるでしょう。
書面がしっかり作成されていれば、贈与を受ける人も承諾しているため、遺贈よりも実行性に優れていると言われているのです。
ただし、遺言書と同じように、遺留分減殺請求の行使は受ける可能性があります。遺留分を考慮した設計が必要となるでしょう。
ご自身で判断し手続きを行うことが難しい場合は、一度専門家に相談されることをおすすめいたします。
大阪相続相談所では無料相談を行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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一般の方向けのセミナーの講師や、司法書士や税理士等専門家向けのセミナー講師も多数手がける。オーダーメイドの家族信託を使った生前対策や、不動産・法人を活用した生前対策が得意である。
- 【保有資格】司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
- 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」 著者/「はじめての相続」 監修
- 全国司法書士法人連絡協議会 理事