遺言書を発見した場合
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
実家の整理をしていたら親の遺言書がでてきた、という話はよくあることです。
遺言書を発見した場合、どのような取り扱いをしたら良いのか対応に悩まれると思います。
このページでは遺言書を発見した場合の取り扱いについて説明していきます。
また、ご自身での手続きや対応が分からないという場合は、無料相談を行っておりますので、お気軽に大阪相続相談所の専門家にご相談くださいませ。
目次 [ 閉じる ]
1.遺言書を発見したら種類の確認をする
遺言書が出てきた、発見したというときは、まず、遺言書の種類の確認が必要です。
発見した遺言書が「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」かによって対応が変わってくるからです。
「公正証書遺言」ならば、封筒や遺言書に「公正証書遺言」とはっきり書いてあるかと思いますので、見ればすぐにわかります。
ただし、封筒の裏に公証人の署名捺印があるだけの場合は「秘密証書遺言」の可能性があり、「公正証書遺言」とは別物なのでご注意ください。
「公正証書遺言」と書いていない場合は、「自筆証書遺言」か「秘密証書遺言」の可能性が高く、封筒に入れられて封印がされている状態でしたら、開封してはいけません。
「公正証書遺言」以外の遺言書の場合は、「遺言書の法務局保管制度」を利用したときを除き、家庭裁判所に検認の届出をしなければいけません。
2.自筆の遺言書は開封せず検認申立する
公正証書で作った遺言書以外の遺言書については、発見したらすぐに家庭裁判所で検認してもらう必要があります。検認を怠ると5万円以下の過料に処せられますので気をつけて下さい。
※公正証書遺言は、偽造・変造のおそれがないので検認は必要ありません。
封印とは、封筒に入れ、糊付けして封をしている部分に捺印をしているものを言います。単に糊付けさせているだけの場合は当てはまりません。
ですが、封印でないからと言って勝手に開封してしまうと、後々相続人の間で偽造を疑われる要因となる可能性があります。
封印ではなく糊付けだけの場合でも、開封せずに家庭裁判所で検認してもらい、開封する方が余計なトラブルにならないかと思われます。
遺言書を開封しても、効力はなくなりませんが、内容を改ざんした可能性があるため、トラブルのもとになります。
3.遺言書の内容を確認する
家庭裁判所で行われる遺言書の検認とは、相続人に対して遺言書の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の形状や日付、署名など内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。
なので、家庭裁判所での検認の手続きが済んだとしても、それは家庭裁判所で遺言書の現状確認が終わっただけであり、遺言書が有効か無効かの判断はされていません。
遺言書が確かに真正なものであると分かっても、その内容が実際に効力を持つという保証はありません。専門家に内容を確認してもらうことが必要です。
そして、もし遺言書の作成について不審な点があるのなら、別途遺言書に関する調停や裁判を行っていく必要があります。
4.遺言を執行する
遺言書の確認が終われば、亡くなられた方の最後の意思を実現させる手続きに移ります。
遺言を実現させるための行為が必要な場合、その行為を為すことを遺言の執行といいます。
遺言執行については以下の3つの場合があります。
死亡と同時に実現して執行する必要がないものの例
- ・相続分の指定・・・相続人が相続する割合を指定すること
- ・子の後見人の指定・・・ひとり親が亡くなった後に子どもの後見人をあらかじめ指定しておくこと
- ・遺産分割の禁止・・・一定期間遺産分割を禁止すること
遺言執行者による執行が必要なものの例
- ・遺言による相続人の廃除・・・相続人から相続権をはく奪する裁判所への申立
- ・遺言による相続人の廃除の取消・・・相続人を許しはく奪していた相続権を復活させる裁判所への申立
- ・遺言による認知・・・生前は隠しておきたかった隠し子の認知など
相続人共同で執行が可能なものの例
- ・遺贈・・・遺言による贈与
- ・遺産分割の方法の指定・・・誰が何をもらうかを指定すること
- ・財団設立の寄付行為・・・財団の基本的内容を定める文書
遺言執行者とは、遺言の執行を相続人に代わって行う者です。
一定の場合を除いて必ずしも必要ではありませんが、遺言執行者がない場合には、相続人全員が共同してしなければならないので、円滑に相続手続を進めるためには選任した方がいい場合もあります。
遺言執行者を選任するのには、下記の3つの方法があります。
遺言執行者には、未成年者や破産者でなければ誰でもなれますが、遺言内容が複雑な場合には専門家に依頼するのが確実です。
- 【1】 遺言で指定する方法
- 【2】 遺言で第三者に指定してもらう方法
- 【3】 家庭裁判所に選任してもらう方法
故人が財産をすべて他人に遺贈してしまった
故人が遺言によって財産のほとんどを、一部の相続人だけに相続させたり、他人に譲ってしまったり、生前に贈与してしまったりしていた場合でも、遺留分(一定の相続人に認められる個人の財産に対する権利)を金銭で取り戻せる可能性がありますのでご相談ください。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律上保障された一定の割合の相続財産のことで、対象となる相続人の範囲や、請求できる割合などについてお話ししております。
遺留分について遺言書の見つけ方について
そもそも遺言書があるかわからないので、遺言書の有無を確認したいという場合もあるかと思いますので、遺言書の探し方をご紹介いたします。
公正証書遺言の探し方
公正証書遺言の有無は遺言検索システムで調べる
公正証書遺言は、公証役場の「遺言検索システム」で調べることで、その有無がわかります。
遺言が保管されている公証役場が最寄りの公証役場でない場合でも、最寄りの公証役場に行って問い合わせれば大丈夫です。
ただし問い合わせできるのは、相続人かその代理人に限られます。
遺言検索システムの利用料金は無料ですが、代理人が行う場合代理手数料がかかります。
また、下記の書類などを持って行かないと見せてもらえないので注意してください。
- 被相続人が死亡したとの記載のある戸籍謄本や除籍謄本
- 自分が相続人であることを証明できる戸籍謄本
- 免許証などの写真付きの身分証明書
- 印鑑
秘密証書遺言の探し方
次に滅多に使われることがない秘密証書遺言の探し方について説明いたします。
秘密証書遺言を作成する際には公証人が関与するので、公証役場に問い合わせれば遺言書作成を行ったかどうかの確認ができます。
しかし、遺言書は公証役場で保管していないので、遺言書の内容を確認する場合は後述の自筆証書遺言と同じ方法で探す必要があります。
まずは公証役場の記録を確認して、遺言書の有無を確認してから探すという流れになります。
秘密証書遺言は自筆証書遺言と同じ探し方とお話ししましたが、法務局の自筆証書保管制度を利用していない場合に限ります。
法務局の自筆証書保管制度を利用している場合は、法務局(遺言書保管所)に交付の請求を行います。
自筆証書遺言の探し方
最後に自筆証書遺言の探し方ですが、自筆証書遺言の探し方には2通りあり、それぞれに異なります。
- 【1】 法務局の保管制度を利用しているとき
- 【2】 それ以外
法務局の保管制度を利用しているとき
※令和2年7月10日以降の相続で可能性があります
全国ほとんどの法務局(本局・支局)で、自筆証書遺言の有無を調べることができます。
全国の法務局(遺言書保管所)一覧はこちら1) まずは、遺言書の有無を調べるために「遺言書保管事実証明書」の請求をします。
名前の通り、故人の遺言書が保管されているかどうかをこれで判別します。
これを取得するためには、次の書類が必要です。
- 故人の戸籍謄本
- あなたの住民票
- あなたが相続人であることが分かる戸籍謄本
- 収入印紙800円
2) 遺言書があることが分かったら、遺言の内容を知るために「遺言書情報証明書」の請求をします。
名前の通り、遺言書に書かれている情報をこれで把握することができます。遺言書の代わりに使うことが可能で複数取得することが可能なので、早く手続きを終えたいときは、複数取得することをオススメします。
これを取得するためには、次の書類が必要です。
- 故人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票の写し
- 収入印紙1400円/通
法務局の保管制度を利用していないとき
公証役場や法務局など特定の場所に保管されるものではないので、遺言を作成された方がご自分で保管されています。ですので、被相続人(相続される人、相続の開始にあたっては亡くなった人)の持ち物を探していく必要があります。
- 相続人に預けている
- 銀行や信託銀行に預けている
- 友人、知人に預けている
- 専門家に預けている
- 机の引き出し、鍵付きの入れ物、仏壇付近など
上記内容を踏まえて、持ち物の中にない場合は、被相続人と付き合いのあったと思われる方に、ご挨拶を兼ねて遺言書の有無をご存じないか問い合わせても良いかと思います。
また遺品の中に紛れている場合のありますので、遺品整理は十分注意して行ってください。
そして、司法書士や行政書士などの専門家に預けていそうな場合は、必ず問い合わせて遺言の有無を確認するようにしてください。
遺言書を発見した場合の対応、遺言書の探し方についての説明は以上となります。
必要な書類の準備や、手続きを行う上で専門的な知識が必要となってきますので、ご自分で行うことに不安がある場合は専門家にお任せください。
大阪相続相談所では、様々なサポートプランを用意しておりますし、初回無料相談を行っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
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一般の方向けのセミナーの講師や、司法書士や税理士等専門家向けのセミナー講師も多数手がける。オーダーメイドの家族信託を使った生前対策や、不動産・法人を活用した生前対策が得意である。
- 【保有資格】司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
- 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」 著者/「はじめての相続」 監修
- 全国司法書士法人連絡協議会 理事