公正証書遺言の作成にかかる費用とは|費用の参考事例も紹介
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
遺言書には、いくつか種類があります。その中でも、無効になるリスクも少なく、確実なのが「公正証書遺言」です。
公正証書遺言は、希望する遺言内容を元に、公証人が作成し、公証人役場で保管してもらう遺言書です。
そのため、遺言を作成するのであれば、公正証書遺言が最もおすすめです。
しかし、公正証書遺言には、自身で作成する遺言と違い、作成するのに費用がかかります。
この記事では、公正証書遺言を作成する際にかかる費用について詳しく解説します。
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公正証書遺言は費用がかかるけどトラブル回避に最も有効!
遺言にはさまざまな種類がありますが、主に作成される遺言は以下の2つです。
公正証書遺言は伝えた内容を元に、公証人が遺言を作成し、公証人役場に保管してもらう遺言です。
そのため、不備・不足によって遺言が無効になってしまったり、第三者に改ざんされたりする心配がありません。
費用はかかってしまいますが、その分大きなメリットがありますので、遺言書の作成を検討されている方には、公正証書遺言を作成することをおすすめしています。
作成にかかる費用相場を他の2つの遺言と比較していますので、ぜひ参考にしてください。
- ・自筆証書遺言・・・本人が手書きで作成する遺言書
- ・公正証書遺言・・・公証役場で公証人に作成してもらう遺言書
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
---|---|---|
作成費用 | 無料 | 3万円〜15万円程度 ※財産額によって異なる |
証人への報酬 | 不要 | 1万円〜2万円 |
専門家への依頼費用 | 5万円〜10万円程度 | 10万円〜25万円程度 |
公正証書遺言にかかる費用
公正証書遺言を作成する場合、以下のような費用がかかります。
遺言書に記載する財産額や、専門家に依頼するかどうかで費用は異なりますが、少なくとも15-20万円程度の費用がかかると考えておきましょう。
それぞれの費用について詳しく見ていきましょう
※遺産金額が1億円未満の場合は、別途11,000円(遺言加算)が加算されるのでご注意ください。
なお、手数料は、遺言によって財産を受け取る人ごとに算出します。例えば、長男と次男に相続させる場合には、長男分・次男分それぞれで手数料がかかります。
遺産総額が1億円未満の場合、上記に11,000円の遺言加算費用がかかり、病院や施設への出張を求める場合は出張日当や費用加算もあります。
- ・公証証書作成手数料+遺言加算費用(遺産が1億円未満の場合)
- ・証人に支払う報酬
- ・司法書士などの専門家への依頼費用
公正証書作成手数料+遺言加算費用
公正証書遺言は、公証役場で作成してもらいますので、作成の手数料がかかります。 手数料は遺言書に記載する財産額に応じて決められており、具体的には以下のとおりです。遺言書に書く財産の合計金額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
謄本手数料
公正証書の原本は公証役場で保管され、遺言作成者にはその正本と謄本が渡されます。 正本・謄本の作成費用として、用紙1枚につき250円がかかります。 遺言が10枚の場合には、正本・謄本で合計20枚ですので、手数料の合計は5,000円となります。証人に支払う報酬
公正証書遺言を作成する際には、証人を2人用意する必要があります。 証人は、相続人となる可能性のある人以外で選任しなければいけません。 自身で友人・知人に頼めるのであれば、報酬を払わずに済むこともありますが、用意できない場合には、第三者に証人になってもらうよう依頼し、報酬を支払わなければいけません。 証人の依頼先は主に、- ・司法書士などの専門家
- ・公証役場(紹介を依頼)
- ・知人
依頼先 | 報酬の相場 |
---|---|
司法書士などの専門家に依頼する場合 | 1万円〜2万円程度 |
公証役場で紹介してもらう場合 | 8,000円〜1万5,000円程度 |
知人お願いする場合 | 5,000円程度 |
専門家への依頼費用
公正証書遺言の作成を司法書士などの専門家に依頼する場合には、当然依頼費用がかかります。 主な依頼先は、弁護士、司法書士、行政書士です。 依頼費用は財産額や遺言の内容などによって異なりますが、おおよそ10万円〜25万円程度です。 依頼先ごとの費用の詳細については、次章にて解説しています。【専門家別】公正証書遺言の依頼費用とメリット・デメリット
「公正証書遺言は、公証人が作成してくれるから、別で専門家に依頼する必要はないのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、公証人はあくまで遺言の内容が無効でないかを確認し、遺言の有効性を保証してくれるだけです。
そのため、積極的に相続トラブルを防ぐためのアドバイスや、希望を実現するための施策や提案はしてくれません。
公正証書遺言を作成するのであれば、相続対策に精通している司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
専門家ごとの依頼費用の相場は以下のとおりです。(遺言書に記載する財産額が3,000万円の場合)
以下では、依頼先それぞれのメリット・デメリットについても解説します。
司法書士法律に関する書類を作成する専門家で、特に不動産の登記を得意としています。
そのため、不動産についてはとても詳しく、遺産に不動産が含まれているような場合には司法書士に依頼するのがおすすめです。
また、弁護士に比べ費用が安価な傾向があるという点も大きなメリットです。
ただし、相続紛争への対応はできないため、他の相続人と調停や訴訟になったときは弁護士に依頼することになります。
一方で、弁護士に比べ紛争のイメージがなく平和的で、他の相続人に警戒される心配は少ないと言えます。
弁護士は、法的な紛争を解決するプロです。
そのため、相続に精通している弁護士であれば相続争いについてよく理解しており、複雑な相続など相続トラブルが生じそうなケースでは適切な遺言内容を提案してくれるでしょう。
また、遺言執行者も併せて依頼しておけば、万が一相続発生時に争いが発生しても、しっかりと対応してくれるはずです。
ただ、その分費用は他の専門家よりも高い傾向があります。
行政書士は、公的機関に提出する書類を作成する専門家です。
行政書士は、スポット的に依頼することができる上、他の専門家に比べて費用が安価な傾向にあるため、費用を抑えたいという方におすすめです。
ただし、相続が発生したとき、相続登記の手続きや訴訟への対応はできないため、別途司法書士や弁護士に依頼する必要があります。
また、行政書士の対応業務は幅広く、相続に特化しているような行政書士は少数です。そのため、遺言書の内容に関する提案は他の専門家に比べると期待できないかもしれません。
司法書士 | 10〜25万円程度 |
弁護士 | 15〜25万円程度 |
行政書士 | 10〜20万円程度 |
司法書士
メリット |
|
デメリット | ・相続紛争には対応できない |
弁護士
メリット | ・相続争いに対応ができる |
デメリット | ・費用が高い傾向にある |
行政書士
メリット | ・気軽に依頼することができる |
デメリット |
|
依頼する専門家が「相続に精通している」ことが大切!
適切な遺言を作成するためには、相続に関する知識とノウハウが必要です。
司法書士や弁護士、行政書士には、事務所や専門家ごとに得意分野があり、だれでも相続に詳しいというわけではありません。
遺言書の作成を依頼する際には、事前に事務所のホームページを確認し「相続に関する実績があるか」を確認しておくようにしましょう。
公正証書作成費用計算方法と参考事例
公正証書の作成費用は、以下のように算出します。
以下では、公正証書を作成する際の費用を、事例ごとに紹介いたします。
ぜひ参考にしてください。
- 【STEP①】 遺言によって財産を受け取る人ごとに、受け取る財産額を算出
- 【STEP②】 受け取る財産の価格ごとの基本手数料を合算し、遺言書全体の手数料を算出する
- 【STEP③】 遺言書に記載する財産が1億円以下の場合、②で算出した手数料に1万1000円
- 【STEP④】 遺言書の枚数によって謄本手数料を加算(3000~5000円程度)
【事例①】妻に3,000万円、長男に1,000万円相続させる場合
公正証書作成費用 | 妻分の作成手数料 | 23,000円 |
長男分の作成手数料 | 17,000円 | |
遺言加算費用 | 11,000円 | |
謄本手数料 | 4,000円 | |
専門家への依頼費用 | 130,000円 | |
証人への報酬(2名) | 30,000円 | |
合計 | 21万5,000円 |
【事例②】妻へ7,000万円、長女へ6,000万円を相続させる場合
公正証書作成費用 | 妻分の作成手数料 | 43,000円 |
長男分の作成手数料 | 43,000円 | |
遺言加算費用 | 11,000円 | |
謄本手数料 | 4,000円 | |
専門家への依頼費用 | 150,000円 | |
証人への報酬(2名) | 30,000円 | |
合計 | 28万1,000円 |
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