美術品や骨董品がある場合の相続対策
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
「趣味で集めた美術品や骨董品などは相続手続き的にどうすればいいんだろう」と思ってらっしゃいませんか。
この記事では、美術品や骨董品が相続財産に含まれるときに気を付けないといけないことや、美術品や骨董品を用いた相続対策についてお話ししていきたいと思います。
アンティークコインなどの値上がりしそうな美術品は、相続対策に有効なので相続対策の一手段として用いるのがいいでしょう。
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美術品と骨董品の相続財産評価額は時価扱いになる
趣味で集めた美術品や骨董品の評価は、自分の資産形成の観点からも気になりますが、相続のときにどのように評価されるかも気になるものです。
結論から言うと、美術品や骨董品が相続財産に含まれる場合には、「すべて時価」で評価します。
というのも、相続財産の評価は原則として相続が開始した日(死亡日)の時価で計算すると法律で定められているからです。(相続税法 第22条)
例えば、年代物のアンティーク金貨を持っている場合、物理的には単なる何グラムかの「金」でしかありませんが、このような美術品や骨董品は人気と希少性の観点から「付加価値」がついているので、実際に売買される金額はもっと高額になります。
この売買される金額、つまり時価で相続財産として評価され課税されるのです。
美術品や骨董品についての相続を考えるときには、時価が重要となってきますが、通常は熱心なコレクターであっても時価を算定することは容易ではありません。
また、「自分はこれくらいと思っていた」と言っても税務署が認めることはないでしょう。
したがって、美術品や骨董品の相続のことを考えるにあたっては、必ず「時価」を調べるようにしてください。
美術品の時価の判断基準は?
美術品や骨董品を評価するときの「時価」は、次の4つを参考に判断します。
しかし、【必ず専門業者に時価を計算してもらおう】で説明しますが、自己判断や安易な判断は危険なので避けるようにしましょう。
- 【判断基準1】 同じものが売られていればその販売価格
- 【判断基準2】 買取業者の査定価格
- 【判断基準3】 美術商などの専門家による鑑定価格
- 【判断基準4】 購入した価格
美術品や骨董品が相続財産の中にある場合の注意点
相続で一番気になることと言えば相続税のことではないでしょうか。
美術品や骨董品の相続の現場では大きく2つの注意点があると言われているので、その2点について説明いたします。
資産隠しに使うのは絶対にやめよう
どんなコレクションを持っているかにもよりますが、美術品と骨董品などには人気と希少性の観点から「付加価値」が付きやすく、それは税務署も同じくよく知っているので、資産隠しの目的で美術品や骨董品を用いることは絶対にNGなのです。
また、1点または1組が5万円以下の一般動産(不動産以外の財産)は、家財として一式で評価すればいい(国税庁)という原則があります。
国税庁/一般動産についてそのため、5万円以下なら何点持っていても相続税を払わなくて良いというセールスをする販売業者もいると聞きます。
しかし、一点だけなら問題ないでしょうが、数十点にもなれば悪質な資産隠しとみなされてもおかしくありませんので気を付けましょう。
実際に大阪相続相談所が鑑定などをお願いしているアンティークを取り扱う企業様の担当者の声をご紹介します。
"『美術品や骨董品の市場価値は税務署にはわかりにくいから、申請額を圧縮でき節税になる』といったうわさを耳にしたことがありますが、私の実体験から全くそんなことはないと思います。"
実際、当局の方が美術品や骨董品などの1つであるアンティークコインの時価査定を求めに来た業者の話を聞きますし、地金扱いする考えは微塵もないようです。
いわゆる『資産隠し』の手段として美術品や骨董品などに期待を寄せるのは大変危険な考え方と思うのでやめた方がいいでしょう。
このような事情から、美術品や骨董品などは資産隠しには使えません。
しかし、上手に利用することで、相続税の節税や資産形成を有効に行うことができます。
今お持ちの美術品や骨董品などを将来、次の世代に何かいい形で繋げたいといった相談もよく受けますので、そのあたりを考えてみましょう。
必ず専門業者に時価を計算してもらおう
美術品や骨董品が相続財産の中にある場合に、必ずやって欲しいことは、【専門業者等にご自身のコレクションを見てもらい、市場価値を概算してもらうこと】です。
なぜなら、ブランドショップや質屋などの総合買取店のようなところでは、市場の付加価値を付けずに現状の業界相場や地金相場以下でしか見積もりをしないことが多いからです。
例えば、もしあなたが脳梗塞の場合、総合病院より脳梗塞専門の病院で専門の治療を受ける方が当然回復する確率は高いですよね。
美術品や骨董品もそれと同じで、専門のところでしっかりと鑑定していただき、あなたの判断材料にすべきです。
誤った時価評価では、誤った判断しかできません。
やはり、美術品や骨董品などのような専門性の高い財産の正しい時価を知るためには、専門業者に持っていくのがいいでしょう。
大阪相続相談所には提携の鑑定専門業者がいるので、相続した大切な美術品や骨董品を適切に鑑定いたします。ご安心ください。
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相続させるか贈与するかを決めよう
市場価値がおおよそわかれば、それから「将来に向けて美術品や骨董品を相続の対象とするか、贈与動産として扱うか」などの判断ができます。
アンティークコインで見る具体例
実例として、「アンティークコイン」の例をあげてみましょう。
アンティークコインも他の美術品や骨董品と同様に、その美術品価値が分かる専門業者にみてもらうことが重要です。まずは、アンティークコインを取り巻く事情からお伝えします。
2011年から2012年にかけて『アンティークコイン投資ブーム』が起こりました。
書籍出版やセミナーも盛んに行われ、その煽りを受けてたくさんコイン販売店が開業しました。
そして、『アンティークコインの市場価値は税務署にはわかりにくいから、申告額を圧縮でき節税になる』、『西洋の富裕層は必ず行っている』、『3年後には3倍の価値になる』といった触れ込みが流行しました。
そのような販売店の話に乗った人も多く、たくさんのアンティークコインが販売されました。
それから時代は平成から令和に移り変わり、購入者の相続が起こりはじめています。
正確性の高い見積もりをしてくれる業者の見つけ方
税務署もアンティークコインの価値を分かって動き出すくらいには一般に浸透してきましたが、日本ではまだまだアンティークコインなどの美術品市場は小さく『販売から鑑定、そして買取まで全て行えるような業者』はまだあまり存在していません。
そのため、価値があるにもかかわらずブランドショップや宝飾店に買取を依頼されて、地金以下の金額で販売されたコレクターの方もたくさんいらっしゃいます。
ただし、依頼を受ければ過去20年までの国内外のオークション実績を調査する手法で、正確性の高い実勢価格を見積もりしてくれる業者もあります。
そのような業者を見分ける方法は簡単です。
アンティークコインのプレミア価値をつけての売却を想定して提案・見積もりをしてくれるかどうかで判断しましょう。
次のように、複数の売却方法などを提案してくれる業者ならハズレは少ないでしょう。
- 【売却方法1】 オークション
- 【売却方法2】 委託販売
- 【売却方法3】 即金買い取り
さて、価値が分かれば、相続させるか贈与するかを決めましょう。
美術品や骨董品を相続させる場合
相続するなら、将来相続人となる方に、該当するコインの価値を面倒くさがらずにちゃんと伝えておくべきでしょう。
本来、億単位のコイン価値があるにもかかわらず、所有者のご子息は父親の趣味に全く興味がなく価値を知らない状態で相続した場合、美術品ではなく地金の金額で処分ということにもなりかねませんので、価値があるものと伝えておきましょう。
美術品を相続させる場合のメリット
美術品や骨董品を相続させるメリットとしては、基礎控除が大きいため、ある程度値上がりをしていても基礎控除内であれば相続税がかからない点です。
※基礎控除とは、「3,000万円+600万円×相続人の人数」までは相続税がかからない
美術品を相続させる場合のデメリット
美術品や骨董品を相続させるデメリットとしては、死亡時の財産すべてが相続税計算の算定基礎となることです。
美術品や骨董品など以外の財産で「相続税がかかる」という方には税金上のメリットがありません。
また、値上がりする財産ですと、値上がり分にも相続税がかかってしまいます。
もう一つ、美術品や骨董品の時価は4つの価格を参考に評価するとお伝えしましたが(【美術品の時価とは?】)、絶対的な時価というものはないので、どのように評価するのかで、相続人同士の争いへと発展する恐れがあります。
美術品や骨董品を贈与する場合
110万円の年間控除枠を有効利用するといいと思います。
ご自身のコレクションの中からでも、また現金資金があるなら新たに購入し与えてもいいでしょう。年数を長く想定すれば、受け取る人にとって長期定期預金の代用とすることも可能です。
美術品を贈与する場合のメリット
相続対策を自分の目で見届けることができるという安心が大きいでしょう。他にも、大きく2つの税金上のメリットがあります。
①暦年贈与
年に110万円以下の贈与であれば、贈与税がかかりません。
ですので、相続財産を年に110万円ずつ(もらう人、1人あたり)減らすことで相続税の節税対策となります。
②相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、贈与された財産(2,500万円まで)の贈与税について猶予し、相続時の相続税として精算することができる制度です。
相続までに値上がりしたとしても、贈与時の価値で相続税を計算するので、値上がりが見込まれる美術品や骨董品などの相続税対策に適しています。
美術品を贈与する場合のデメリット
贈与のデメリットとしては、死亡時の財産すべてが相続税計算の算定基礎となることです。
贈与税率は相続税率よりも高めに設定されているので、うまく利用しないと税金を多く支払うことになってしまいます。
また、不平等な贈与だと後々争いの種となってしまう恐れがあるので注意が必要です。
証拠となる書類を残しておこう
相続させるにしても、贈与するにしても、美術品や骨董品などに共通して大事なことは、下記の書類を証拠として残しておくことです。
- 【1】 購入時の領収書
- 【2】 売却時の見積書
- 【3】 売却時の明細控え
- 【4】 贈与の契約書
なぜなら、贈与税、相続税、そして売却時の利益に課される譲渡所得税などの申告時に価値根拠を示す大変重要な証拠書類になってくるからです。
「どこへいったのか分からない」なら、ぜひ家の隅々まで探してください。また、価値を証明する書類の他に、相続人同士の争いを防止するため、贈与の契約書を残しておくべきでしょう。
実際の相続人の方で35年以上前のレシート、領収書をお持ちで申告の時の控除額計算で大いに役立ったという実例があります。
まとめ
美術品や骨董品は上手に用いることで、有効な相続対策となります。
しかし、美術品や骨董品については、価値が上がるのに平均してかなりの日数がかかります。
「なかなか値が上がらない」といって早まって売却してしまったり、受け継ぐ人がその価値を知らずに売ってしまったりすると、かえって財産が目減りしてしまう恐れがありますので、ご注意ください。
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必ず専門業者や専門の士業などに相談し、大切なコレクションが有効に承継されるようにしましょう。
相続対策は早めに
相続対策は早めに行う事をおすすめしますので、まずはお気軽にご相談ください。相続対策の流れなどについては、下記ページをご参考にしてください。
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- 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」 著者/「はじめての相続」 監修
- 全国司法書士法人連絡協議会 理事