家族信託に課税される税金は?家族信託の税金面での特徴について
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
こちらの記事では、家族信託を税金の面からご紹介していきます。
まず信託とは、自分の財産の管理を他の人に託して、託された人がその財産を使って利益をだし、その利益を受けさせたいと思う人に受けさせる仕組みです。
そして、信託でも管理を家族に託す形式のことを一般的に「家族信託」と言います。
そしていきなり結論からお話しすると、家族信託とは実は税金がかからない、あるいはかかったとしても、とても安いという特徴があります。
では、どんな税金がかかってくるのか、かからないのかなど詳しく解説していきます。
家族信託と生前贈与と税金のハナシ
前編【贈与税・不動産取得税・登録免許税】どんな税金がかかってくるか解説!
目次 [ 閉じる ]
税の種類によって課税対象者は変わる
最初に、家族信託を利用すると誰に税金がかかり、どのような場合に税金がかかるのかについてご説明していきます。
家族信託では、財産の所有権は形式的に受託者に移りますが、信託した財産から生み出された利益を受け取るのは受益者です。
ですので、基本的に受益者に税金がかかることになります。
そして税金がかかるのは「信託の効力が生じた時の前後」で、信託財産から生じる利益を受ける人が変わる場合です。
どのような税金がかかるかは、利益を受ける人が変わった原因によって異なります。
利益を受ける人(受益者)の死亡が原因の場合には【相続税】が発生し、受益権を売却した場合には【所得税と住民税】が発生します。そして贈与した場合には【贈与税】が発生します。
ですが、不動産を信託財産とする場合は、信託を原因とする所有権移転登記が行われ、所有権移転に伴う登録免許税と固定資産税は利益を受ける人(受益者)の負担とすることが多いです。
利益を受ける人(受益者)が対象の税金
家族信託を利用した際に、利益を受ける人(受益者)にかかる税金は以下のものがあります。
- ・贈与税
- ・相続税
- ・譲渡所得税
- ・信託期間中の税金
財産を預かる人(受託者)が対象の税金
続いて、家族信託を利用した際に、財産を預かる人(受託者)にかかる税金を紹介します。
- ・登録免許税
- ・固定資産税
家族信託で論点となる税金
家族信託のようにお金や不動産などの財産を誰かに移すことを検討する時に論点になる税金というものは3つほどあります。
- ① 贈与税
- ② 不動産取得税
- ③ 登録免許税
※「不動産取得税」と「登録免許税」は不動産を取り扱った時特有の論点です。
この3つの税金が、検討対象となります。
家族信託は贈与税がかからない
まず贈与税についてお話ししていきますが、実は家族信託というものは贈与税がかかりません。
なぜかというと、贈与税は財産をあげた時に対して課せられる税金であり、財産をもらったことに対して支払う税金ですが、家族信託は、財産をもらうわけではないからです。
家族信託とは【私の財産をあなたに預けるので、私のために使ってね】というもので、財産をもらうのではなく預かるだけなのです。
財産をもらうわけではなく、預かっただけなので贈与税の対象にはあたらないということです。
不動産取得税も家族信託ではかからない
続いて不動産取得税についてお話ししていきますが、贈与税の考え方と同じで、家族信託では不動産取得税もかかりません。
不動産取得税は、不動産を取得した際に発生する税金なので、不動産をもらったわけではなく、預かっただけの家族信託では、不動産取得税もかからないということです。
登録免許税は家族信託でもかかる
最後に登録免許税についてお話ししていきます。
贈与税と不動産取得税はかからないとお話ししましたが、信託財産に不動産がある場合は登録免許税がかかってきます。
登録免許税は、登記の名義を変えること自体にかかる税金で、登記手続に対して課せられます。
財産をあげたり預かったりすることや、相続だからなどとは全く関係がありません。
家族信託の場合でも、不動産を預けたり預かったりする時には名義を変更しなければいけません。
なので、家族信託の時でも名義変更をする場合は、登録免許税がかかってきます。
ですが、家族信託の場合、登録免許税の税率が通常よりも安くなります。
通常時の登録免許税は、不動産価格の2%ですが、家族信託の場合、登録免許税は不動産価格の0.3%~0.4%です。
通常時の5分の1以下の税率なので、登録免許税がかかっても家族信託だとかなりお得になります。
家族信託の税金面での特徴
家族信託は、高額の税金がかかる手続きではなく、「贈与税はかからない」「不動産取得税はかからない」「登録免許税はかかったとしても安い」といった特徴があります。
お金を家族信託する場合
不動産はなく、お金のみ家族信託する場合は、不動産がないので、「不動産取得税」「登録免許税」に関して考える必要がありません。
残る贈与税だけ考えればいいのですが、贈与税も非課税です。
なので、お金の家族信託であれば、税金を支払うことなく手続きをすることができます。
生前贈与より家族信託がおすすめ?
生前贈与とは、簡単に言うと自分の財産を譲る契約のことをいいます。
財産を生前贈与したい、名義変更したいという内容で事務所にお越しいただいたり、ご相談いただいたりすることがよくあります。
その際に、財産をあげるんですか?
生前贈与で対応するんですか?
贈与税がすごくかかるかもしれないですよ。
とお話しさせてもらいます。
実際に確認してみたら不動産取得税が、とても高いご案件が少なからず見受けられるからです。
生前贈与だと不動産取得税が高くなるような場合、「家族信託を利用すると税金がかからずに、名義変更したり、資産を動かしたりすることができますよ。」といつもご案内させていただいております。
状況によって生前贈与がいい場合と家族信託がいい場合があるので、専門家に相談してみていただければと思います。
家族信託はなぜ税金が安いのか
ここまで、家族信託に税金がかからないので、お得ですよとお話ししてきましたが、本当に?それちょっと都合良すぎない?と思われる方もいらっしゃると思います。
ですので、続いては家族信託だと税金がかからない仕組みについて、お話ししていきます。
家族信託の仕組み
まず、家族信託の仕組みについてお話ししていきます。
Aさんが、自分の財産を息子であるBさんに預けるので、Aさんのために預かってね。というのが家族信託です。
Aさんは、財産を預ける立場、委託者となります。
そして財産を預ける人がいるということは、財産を預かる人が必要です。
その財産を預かる人を受託者といい、今回の例だと子どもであるBさんが受託者となります。
最後に、財産の利益を還元される受益者というポジションがあります。
預かった財産の利益は、受益者に還元されるのです。
Aさんの財産をBさんに預けるので、Aさんのために使ってほしい。となり、財産を預けるポジションと使ってもらうポジションの両方がAさんになるのです。
これが典型的な家族信託の関係性です。
なぜ税金がかからないのか
所有権という法律用語をよく耳にするかと思います。
不動産の所有権などと使われますね。
家族信託の所有権の中には2つ権利があります。
- ① 管理権
- ② 受益権
贈与税や不動産取得税などの流通税と呼ばれる税金の場合、どこに税金が課せられるのかというと、受益権に対して税金が課せられていきます。
所有権という果物を構成するのが、【種である管理権】と、【おいしい実の部分である受益権】だと思ってください。
何で受益権がおいしいかというと、所有している不動産から発生する利益を手にする権利が受益権だからです。
管理権はあくまで管理する権利ということです。
自分で管理する場合は、管理権と受益権を一緒に考えればいいですが、管理だけ任せる場合のことを想定して、受益権と管理権を分けて考えるわけです。
このような仕組みにすることで、受託者に管理は任せたが、発生したおいしいところは受益者のものとすることができるわけです。
おいしい思いをする受益権が他人に移ると贈与税がかかるのですが、元々の所有者のままなら贈与税はかからないという仕組みなので、家族信託の場合は税金がかからないのです。
でもこの果物は管理するために管理人が持ち歩いているので、はたから見ると管理している人が、受益権も管理権も持っている所有者のように見えてしまいます。
なので利益権者は別にいることを示すために、不動産の場合は登記にそのことを記載しておく必要があるのです。
面倒くさいようですが、絶対に必要なことなので気を付けましょう。こうすることで、不動産取得税もかかりません。
税金判断のポイント
例えば、受益権が誰か別の人に移った場合、財産の移転が起こったとなり、受益権をもらった人に税金が課せられます。
ですが受益権が別の人に動かなければ税金が課せられることはありません。
管理権や管理権だけが入った抜け殻のような所有権がいくら動こうが、何をしようが税金判断の対象ではないので、税金はかかってこないのです。
あくまでも受益権が移るかどうかが税金判断のポイントとなります。
家族信託における権利について
通常、所有権という1つの果物の中に管理権と受益権が一緒に入っているものですが、信託の手続きというものは、最初に果物の中に入っている権利の中から受益権だけをくり抜く作業を行います。
そしてその後に、所有権を移転する作業を行います。
移転する所有権は、受益権がくり抜かれた抜け殻、皮みたいなイメージです。
所有権を受託者に移転する作業を行う際、税金判断のポイントである受益権はどうなっているかと言うと、受益者はお父さん、委託者もお父さんなので、受益権はお父さんの手元に残っている状態です。
受益権が誰かに移った訳ではなく、ただ単純に税金判断の対象外である抜け殻部分だけが受託者である子どもに移ったという形になるので、税金が課せられないとなります。
家族信託と税金に関するまとめ
家族信託の税金的な面について、法律的な事柄を含めてお話しいたしました。
- 家族信託というものは、財産を移転するわけではなく、受益権が移転するわけでもないので、税金は基本的にはかからない
- 登録免許税がかかることもあるが、通常税率の5分の1以下になるので家族信託を利用するととても安くなる
しかし、ご家族様あるいは案件ごとに状況が異なりますので、状況に合わせてもう少し詳しく税金のことを考えたり、フォローする必要があることもあります。
うちの場合はどうなるんだろう?ということも当然思われたと思いますので、大阪相続相談所の司法書士による無料相談をお気軽にご活用ください。
合わせて読みたい記事
一人で悩まないで!まずは無料相談!
0120-151-305
9:00-20:00[土日祝/9:00-18:00]グリーン司法書士法人運営