借金を相続放棄するメリット・デメリットや注意点
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
「借金が相続財産の中に!事前に発見する方法と対処法」では、親の借金に対する法的な責任と借金の調べ方についてお話いたしました。
少し振り返りますと、基本的に親の借金を子供は全く支払う必要はありません。ただし借金は相続してしまうのです。というところまでお話いたしました。
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借金が相続財産の中に!事前に発見する方法と対処法こちらの記事では、現在、親が借金している場合、相続してしまった場合の対処法や考え方について解説させていただこうと思います。
親の借金を背負いたくない人が知っておくべき法的な対処法★後編★
目次 [ 閉じる ]
親の借金の対処法/状況別・注意点
- ① 親が亡くなった後の対処法
- ② 親が生きている間の対処法
- ③ 相続放棄の注意点
親が亡くなった後の親の借金対処法|相続放棄
まず、亡くなった後に親に借金があることが分かった場合や、借金があるのはわかっていたけど、対策する前に親が亡くなってしまったという場合の対処法についてお話しします。
相続した借金の額が、相続した財産よりも多いという場合は、期限内に申し立てを行えば相続放棄という手続きが使えます。
相続放棄が認められたら借金を相続しなかったことになるので、親の借金を支払う必要がなくなります。絶対に支払わないといけないという事はないのでご安心ください。
ただ、借金がある場合は一律全部相続放棄すると判断するのは少し乱暴です。
状況に合わせて相続放棄を行うか判断が必要なので、司法書士などの専門家に相談されることをおすすめいたします。
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相続放棄のメリット
相続放棄とは、故人の財産も借金も何も受け継がないこととする手続きです。
相続放棄のメリットとして考えられるのは、以下のものがあります。
- 被相続人の借金などの負債を支払う必要がなくなる
- 相続に関するもめ事と無関係になる
被相続人の借金などの負債を支払う必要がなくなる
相続放棄せずに普通に相続すると、被相続人(相続される人、相続の開始にあたっては亡くなった人)の資産などプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も全て何もかも引き継ぐことになります。
相続対象となるマイナスの財産は以下のものがあります。
- ・ローン
- ・サラ金やカードなどの借金
- ・滞納している税金
- ・滞納している家賃
- ・滞納している健康保険料
- ・損害賠償債務
- ・買掛金や未払いなど事業に関する負債
相続人の財産では支払うことができない場合は、相続人が自己破産をしなければならない可能性があります。
相続放棄を行うと、相続対象となるマイナスの財産を支払う必要がなくなるので、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は相続放棄を選択することで大きなメリットを得られます。
相続に関するもめ事と無関係になる
遺言の内容に不満があったり、遺言がなく相続人全員で遺産分割協議を行う必要があったりする場合、相続人同士で話し合いをしても意見が合わず、もめてしまうケースも少なくありません。
相続トラブルに発展すると、ひどい場合、何年も続くこともあるので、心身ともに疲弊してしまうこともあるのです。
そのようなトラブルに巻き込まれたくないときは、相続放棄を選択することで相続人ではなくなり、遺産分割協議に参加する必要もなくなるので、相続トラブルに巻き込まれる心配もなくなります。
相続放棄のデメリット
では、次に相続放棄のデメリットについてお話ししていきます。
相続放棄にはメリットもありますが、もちろんデメリットもあるので、注意しましょう。
- プラスの財産も相続できない
- 相続権でトラブルになる可能性がある
- やり直しができない
- 相続放棄が認められないことがある
プラスの財産も相続できない
相続放棄とは、故人の財産も借金も何も受け継がないこととする手続きとお話ししたかと思います。
何もかもということは、プラスの財産である資産も受け継ぐことができないのです。
ですので、相続放棄を選択する前に、しっかり相続財産を確認することが大切です。
確認した結果、プラスの財産が多い場合は、相続放棄ではなく普通に相続する(単純承認)方がいいでしょう。
相続権でトラブルになる可能性がある
相続放棄した人は相続人ではなくなりますが、次の順位の相続人へ相続権が移ります。
借金などのマイナスの財産が多く相続放棄をした結果、次の順位の相続人に相続権が移ると、その相続人からしたら「いきなり何のことかわからない借金を背負わされた!」となり、トラブルに発展してしまうのです。
相続放棄をする場合は、次の順位の相続人に相続放棄することを連絡しておくのが親切ですし、トラブルにならずに済みます。
次の順位の相続人と付き合いがない場合は、見落としてしまうことがありますので、注意しましょう。
相続人調査や相続人の順位については、下記ページで詳しく説明しているので、ご参考にしてください。
相続人調査とは?相続人調査で確認する法定相続人についてやり直しができない
相続放棄は基本的にやり直し(撤回)ができません。
他人に強要されたなど、事情がある場合は撤回が認められることがありますが、相続放棄した後で高額な資産が見つかり相続放棄を撤回したいというケースは認められません。
相続放棄を選択する前に、しっかり相続財産調査を行い、相続放棄をしても損にならないと判断できてから相続放棄を行いましょう。
相続放棄が認められないことがある
相続の制度に「法定単純承認」というものがあります。
法定単純承認とは、一定の事情がある場合、単純承認が成立し、相続放棄や限定承認ができなくなる制度です。
どのような場合に、法定単純承認となるかというと、「相続財産を使用した場合」「相続財産を処分した場合」「相続財産を壊した場合」があります。
葬儀費用のために被相続人の預金を使用した場合も当てはまりますが、その金額にもよります。
過剰に豪華な葬儀を行っている場合は法定単純承認となる可能性が高く、一般的な葬儀の場合だと法定単純承認とならない可能性があります。
判断基準が難しいので、うかつに相続財産を使用しないようにしておきましょう。
相続財産調査や相続放棄の判断などは専門家に相談するのが安全かと思います。
親が生きている間の親の借金対処法|債務整理
次に、親が生きている間に親に借金があることが分かった場合の対処法についてお話しします。
基本的に親の借金は子供に関係ないのですが、借金は返済するのが一番ですよね。しかし、返済できる状況なら悩まずに返済されていると思います。
返済できそうにないから悩まれているということでしたら、私共のような専門家に相談されることをおすすめいたします。
司法書士や弁護士に借金について依頼されると、債務整理という手続きを行う事になるかと思います。
債務整理は大きく分けて、自己破産、任意整理、個人再生(民事再生)という3つの手続きに分類されます。
自己破産
自己破産は、一番聞いたことがあると思いますが、裁判所に申し立てを行い、裁判所が認めてくれたら借金を全く0円にできるという手続きです。
個人再生(民事再生)
個人再生は、借金返済を楽にしたいが、住宅ローンが残っている家を手放したくない場合に選択される手続きです。
個人再生手続きを行うと、住宅ローンはそのまま払いながら、他の債務だけを1/5に減額したり、100万円まで圧縮したり、金利もゼロにできたりするので自宅を残しながら他の借金を減らせます。
個人再生も自己破産同様に裁判所を通す手続きです。
任意整理
任意整理は、司法書士などの専門家と債権者(消費者金融や銀行など)が交渉して、分割払いや、金利をゼロにしてもらう手続きです。
そして任意整理という手続きは、前述した自己破産や個人再生と違い裁判所を通しません。
もしご両親が借金に困っているようであれば、債務整理手続きをしてみてはと背中を押していただければと思います。
そうすることで将来借金を相続してしまうリスクを回避できるのです。
相続放棄した方がいいケース
最後に、相続放棄をおすすめするケースについてお話しします。
プラスの財産よりマイナスの財産が多い
相続財産には、不動産や株、現金などの【プラスの財産】と、借金などの【マイナスの財産】とがあります。
相続財産に不動産や株、現金など(プラスの財産)があったとしても、それよりも借金の額(マイナスの財産)の方が明らかに多い場合は相続放棄した方が良いでしょう。
しかし相続放棄するかしないかはご本人の判断なので、親の借金を代わりに払うという方も中にはおられます。それも1つの考え方なので仕方ありません。
ただ財産額(プラスの財産)よりも負債額(マイナスの財産)の方が多くて払えないよという場合は相続放棄を選択されるべきかと思います。
疎遠で借金の有無が分からない
小さい頃にご両親が離婚され、お父さんと何十年も会っていない状況で、ある日突然お父さんが亡くなったと連絡が来たけれど、借金があるのではないかと心配だと相談いただくケースが結構あります。
この場合は、念のため相続放棄される選択される方もいらっしゃいます。
一応プラスの財産もあるかもしれませんよとお話をするのですが、プラスの財産を調べるのも大変なので、調べることはせずに相続放棄される方は多いのです。
他の相続人と関わりたくない
とにかく関わりたくないので相続放棄するという方もいらっしゃいます。
小さい頃にご両親が離婚して以来、お父さんとは会っていないし、お父さんはその後他の人と結婚して子供もいる状況での相続をする場合、今の家族と相続人同士になるので、遺産分割の話し合いなどをしなければなりません。
しかし、長い間疎遠だったお父さんの相続財産をめぐって、会ったことのない人たちと話し合いなどしたくない。と考える方は多くいらっしゃいます。
そんな場合は相続放棄をしてしまえば、相続人ではありませんので話し合いをする必要もありません。
家業を引き継がない
これも多いパターンですが、亡くなったお父さんもしくはお母さんが会社を経営していたり、事業をしていたという場合です。
前編でもお話ししましたが、事業をしていると借金をしている可能性が一般の方より非常に高いのです。
結構大きい金額を借りている場合も多いですし、兄弟が事業を引き継ぎ自分は事業を引き継がないので関係ないという場合、相続放棄の選択肢をとられる方がベターじゃないかと思います。
相続放棄の一番の注意点
相続放棄の期限は3か月以内
相続放棄手続きの一番のポイントは、期限があるということです。
相続放棄の期限はどれぐらいかという3ヶ月です。
では3ヶ月とはいつからなのかというと、自分が相続人であることを知った時から3ヶ月と決められています。
相続人の第一順位という位置づけなので、配偶者や子供は、基本的には亡くなったことを知った時からと民法上で決められています。
相続放棄の期限を過ぎてしまったら?
例えば極端な話ではありますが、相続手続きを済ませた10年後に多額の借金の請求が来てしまった場合はどうなるのでしょうか。
10年前に親が亡くなり、自分が相続人となり相続手続きを済ませていましたが、10年後に1億円の連帯保証債務の請求が来た。ということが実際にあります。
10年を越えていたケースもありました。
このようなケースを全部一律で、「相続放棄の期限である3ヶ月を過ぎているので」と終わらせるのは気の毒ですし、裁判所も借金の存在が分かった時から3ヶ月というのを認めてくれています。
もちろん全てのケースで認めてもらえるわけではなく、確定的でもないのですが、今まで大阪相続相談所が携わってきた案件では、ほぼほぼ認めてくれています。
内容によっては難しいケースもありますが、諦めずに司法書士などの専門家にご相談ください。
相続放棄のその他の注意点
相続放棄は原則撤回できない
注意点としては、1回相続放棄をしてしまうと撤回できないということです。
例えば、1000万円の借金を相続することになったので相続放棄したけれど、後から1億の財産が見つかったので相続放棄は撤回します。というのは基本的に難しいのです。
「相続放棄する前に、ちゃんと調査していなかったあなたの過失です。」という考えになります。
しかし、騙されていた場合や脅迫されて相続放棄した場合は、取り消しや撤回できる可能性があるので専門家に相談してみましょう。
相続放棄できない場合がある
もう1つの注意点は、3ヶ月以内であっても相続放棄ができない場合があるということです。
少し難しい言葉ですが、【単純承認】という民法の建前があり、一言で言うと「相続財産を使ってしまった後に相続放棄することはできませんよ」というものです。
相続財産を使ってしまうと、相続したとみなされてしまい相続放棄できないということです。
大阪相続相談所に早めに相談くださった場合は、説明して相続財産を使わないように気を付けていただくのですが、やはり一般の方の場合は、借金だけ相続放棄できると勘違いされている方もいらっしゃいます。
相続放棄というのは、全ての財産を相続しないことになるので、「不動産の名義を変更してしまいました。」や「預金を1000万円おろして遊んでしまいました。」等、相続財産を使った後に相続放棄することは難しくなりますのでご注意ください。
しかしあくまでも個別的な判断が必要なことなので、相続放棄を選択する可能性がある場合は、専門家に一度相談してから判断されるべきだと思います。
親の借金の連帯保証人の場合、相続放棄はできない
その他の注意点としては、子供である自分が、親の借金の連帯保証人になっている場合は、相続放棄しても関係がないという点です。
相続放棄はあくまでもその人の相続の話であり、自分を連帯保証人として契約している場合は相続の話とは違ってくるのです。
遺族年金や生命保険は受け取れるのか?
相続放棄をしても、遺族年金や生命保険は、基本的には受け取れます。
ただ生命保険は受取人の欄によって変わってきますのでご注意ください。
生命保険は相続財産ではなく、生命保険の受取人の固有の財産なので、受取人欄に特定の名前が書いてあれば相続放棄をしても受け取れます。
しかし昔は生命保険をかけているのがAさんで、受取人を自分(Aさん)と書いてるケースがありました。
亡くなった方が受取人になっている場合は生命保険も相続財産になってしまいますので注意しましょう。
※生命保険は亡くなった方の財産ではなく、受取人の方の財産です。
親の借金への対処法まとめ
- 親が生きているうちは債務整理を勧めてみましょう
- 親が亡くなった場合は、相続放棄を検討
- 相続放棄には期限があるので注意
- 状況に応じて相続放棄するか判断
- 相続放棄の期限を過ぎていても、状況によっては相続放棄できるかも
インターネットにも良い情報はありますが、ついついそのー部分だけを読み取って勘違いしてしまうケースが多いのです。ご自分で調べた情報をもとに行ったことが、悪い方向にいってしまう場合があるので、ご注意ください。
司法書士などの専門家に相談されるか、相談されないかで何千万もしかしたら何億と相続財産が変わるかもしれないのです。
なので必ず手間と費用を惜しまずに、ご自分の大事な財産のことなので動かれるのがおすすめです。
そして今回説明していませんが、もう一つ【限定承認】という方法もございます。限定承認については下記リンクより「限定承認とは」とご参考にしてください。
限定承認とは補足
10年後に借金がわかった場合では、相続手続きが終わっていると思うのですが、そういう場合でも相続放棄できる可能性はあるのでしょうか。
不動産の相続登記とかも全て済んでしまっている状態でも、全部一回巻き戻して相続放棄手続きを行ったケースもあります。
なので、可能性はゼロではありません。
状況によって巻き戻せる場合と巻き戻せない場合があります。
大抵の事務所は断ることが多いので、大阪相続相談所に相談に来られる方も一度弁護士などに相談されたが、無理だと断られたという方もいらっしゃいます。
3ヶ月が過ぎていたら、全て無理と断る専門家もいますし、相談された方からしたら弁護士に断られたら出来ないと思い込んでしまいます。でも1件目で諦めずに何件か相談してみてください。
大阪相続相談所では無料相談を行っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
親が借金をしていた場合の相続についての動画もございます
グリーン司法書士法人代表の山田愼一が自身の経験も交えながら、親が借金をしていた場合どうすれば良いのか、気を付けた方がいい点や対策について動画でお話ししております。
こちらのページでは、動画の内容を文字とイラストを使って説明いたしました。動画も併せてご参考にしていただければと思います。
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