相続登記とは?|不動産を相続したらするべき手続き・費用を徹底解説
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
不動産を相続した人にとって「相続登記」は重要な手続きですが、聞き馴染みもなく、なにから始めたらよいかわからないという方もいるでしょう。
相続登記とは、簡単に言えば、「不動産を相続した人の名義に変更する手続き」です。
2021年時点で、相続登記は義務ではなく、期限もありませんが、手続きせずに放置すると様々なリスクを伴います。
また、2024年には法改正によって相続登記が義務化される予定です。相続登記が義務化されると、相続開始から3年以内に相続登記をしなければ10万円以下の過料が科されることとなります。
そのため、相続登記についてしっかりと理解し、不動産を相続したら早期に手続きをできるよう準備しておきましょう。
この記事では、相続登記の概要から、手続方法、相続登記を放置することで生じるリスクなどについて解説します。
目次 [ 閉じる ]
相続登記とは相続した不動産の名義変更
相続登記とは、相続した不動産の登記上の名義を、相続人に変更する手続きです。
不動産の名義人を証明するのは法務局が管理する登記簿上(登記データ)の情報ですので、相続登記は非常に重要な手続きです。
相続登記は、該当する不動産を管轄する法務局で行います。
なお、2021年時点では、相続登記が義務ではなく、期限もありません。
しかし、2024年には相続登記が義務化される予定であり、義務化後は手続きをせず放置すると罰則が科されることとなります。
また、相続登記をせず放置することで様々なリスクが生じるため、不動産を相続したら速やかに手続きをするようにしましょう。
2024年に相続登記は義務化される
前述したように、2021年時点で相続登記は義務ではなく、手続きをしなくても特に罰則などはありません。
しかし、2024年までに相続登記が義務化されることが決定されており、3年間放置すると10万円の過料が科されることとなります。
2021年時点で相続登記が義務でないからといって放置しておくと、いざ義務化されたときにスムーズに手続きができない可能性があります。
義務化される前に、相続登記をしておくようにしましょう。
相続登記の手続きに期限はありませんでしたが、2024年を目途に土地や建物の相続を知った日から3年以内に登記手続きを行うように義務化されることが国会で決まりました。
所有者がわからない土地が年々増えており、その問題を解消するための関連法です。
相続登記の義務化に加えて、相続登記の手続きも簡素にすると言われており、管理が難しい場合は相続した土地を手放して国庫に納められる制度が新設されます。
申告しなかった場合は10万円以下の過料に処せられる可能性があるので気を付けましょう。
相続登記の3つのパターン
相続登記には主に以下の3つのパターンがあります。
- ・遺産分割協議で相続する場合
- ・法定相続分で相続する場合
- ・遺言内容に沿って相続する場合
以下のフローチャートで、ご自身の状況に合わせてパターンを確認してください。
遺産分割協議で相続する場合
相続人全員で「誰が、どの遺産を、どの程度相続するのか」について話し合い(遺産分割協議)、不動産を相続することになった人の名義に変更する方法です。これが最も一般的な方法となります。
このケースでは、遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書などの書類が必要です。
遺言書がなく、法定相続分とは異なる内容で相続する場合にはこの方法で手続きをします。
法定相続分で相続する場合
法律で決められた相続分(法定相続分)に沿って、相続人全員で相続登記をする方法です。他の方法に比べ、必要書類も少なく、最もシンプルな方法となります。
遺言書がなく、不動産を法定相続分通りの割合で名義変更する場合にはこの方法で相続登記をします。
遺言内容に沿って相続する場合
亡くなった方が遺した遺言の内容通りに相続する方法です。この場合、遺言書を提出することで手続きを進めます。
相続登記の手続きの流れ
ここからは、相続登記の手続きをする際の流れについて解説します。
大まかな手続きの流れは以下のとおりです。
手続きを進めるための準備はかなり大変であり、複雑です。
できるだけ分かりやすく解説しますが、わからないことや難しいと感じたことがあれば、司法書士に相談することをおすすめいたします。
不動産に関する情報を収集する
まずは、不動産に関する情報を集めましょう。
主に必要な情報は、
- ・不動産の地番・家屋番号
- ・登記上の所有者
の2つです。
それぞれの収集方法は以下のとおりです。
不動産の地番・家屋番号を調査
不動産は一つひとつ識別できるよう、住所とは別に土地には「地番」が、建物には「家屋番号」がつけられています。
相続登記で作成する書類には、この「地番」「家屋番号」を正式に記載する必要がありますので、事前に確認しておきましょう。
「地番」「家屋番号」は以下の書類から確認することができます。
- ・固定資産納税通知書
固定資産税の納付を通知する書類で、毎年市区町村役場で発行され、6月ごろに届きます。 - ・登記済権利証または登記識別情報通知
不動産を購入したり、相続したりしたときに法務局から発行される書類です。 - ・登記簿謄本
不動産の権利関係などが記載されている書類です。法務局で保管されており、写しを法務局で取得することが可能です。 - ・名寄帳(上記の書類が手元にない場合)
名寄帳とは、その人が所有している不動産の一覧表のようなもので、市区町村役場では「固定資産課税台帳」とも呼ばれています。上記のうち、登記簿謄本以外は再取得することができません。亡くなった方が保管しているはずの書類ですが、場合によっては見当たらないということもあるでしょう。
名寄帳には、亡くなった方が所有している不動産の地番・家屋番号がすべて記載されていますので、そのような場合には、市税事務所や市区町村役場で名寄帳を取得しましょう。名寄帳は、相続人であれば不動産のある市区町村役場で取得することができます。
登記上の所有者を確認する
「地番」「家屋番号」が確認できたら、登記簿謄本と法務局で登記簿謄本を取得して、登記上の所有者を確認しましょう。
もし、手元に以前取得した登記簿謄本があったとしても、最新のものを取得するようにしてください。
登記簿謄本は、窓口で直接取得するか、郵送にて取り寄せるか、2つの方法があります。なお、登記簿謄本は全国どこの法務局でも取得が可能ですので、お近くに法務局がある場合には、窓口で取得するのがスムーズです。
登記簿謄本の取得方法 | |
---|---|
窓口で取得する場合 | |
取得できる人 | 誰でも可能 |
準備するもの |
|
手続きの流れ |
|
郵送で取得する場合 | |
取得できる人 | 誰でも可能 |
準備するもの |
|
手続きの流れ |
|
登記簿謄本の取得方法 | |
---|---|
窓口で取得する場合 | |
取得できる人 | |
誰でも可能 | |
準備するもの | |
|
|
手続きの流れ | |
|
|
郵送で取得する場合 | |
取得できる人 | |
誰でも可能 | |
準備するもの | |
|
|
手続きの流れ | |
|
登記簿謄本を取得したら、所有者を確認しましょう。
登記簿謄本の見方は以下のとおりです。
被相続人・相続人の戸籍書類等を収集する
次に、被相続人(相続される人、相続の開始にあたっては亡くなった人)と相続人の戸籍書類を集めます。
戸籍書類には、以下のような種類がありますので、それぞれの違いについて理解しておきましょう。
戸籍の種類 | 概要 |
---|---|
現在戸籍 | その名の通り、現時点での戸籍です。 |
除籍 | 除籍とは、戸籍に記載されていた人が死亡や結婚、本籍地の移転などによって、その戸籍(本籍地)に記載されていた人全員が居なくなり、閉鎖された戸籍のことをいいます。 |
原戸籍または改製原戸籍 |
戸籍は法律の改正によって様式などが変わることがあります。 新しい戸籍に変わるまで使われていた古い戸籍のことを原戸籍(はらこせき)といいます。改製原戸籍は、改製が行われた時に本籍だった場所の役所に保管されています。 |
戸籍の種類/現在戸籍 |
---|
その名の通り、現時点での戸籍です。 |
戸籍の種類/除籍 |
除籍とは、戸籍に記載されていた人が死亡や結婚、本籍地の移転などによって、その戸籍(本籍地)に記載されていた人全員が居なくなり、閉鎖された戸籍のことをいいます。 |
戸籍の種類/原戸籍または改製原戸籍 |
戸籍は法律の改正によって様式などが変わることがあります。 新しい戸籍に変わるまで使われていた古い戸籍のことを原戸籍(はらこせき)といいます。改製原戸籍は、改製が行われた時に本籍だった場所の役所に保管されています。 |
相続登記をする上で、最も大変なのがこの作業です。
必要な戸籍書類は、相続方法によって異なり、具体的には以下のとおりです。
遺産分割協議による相続登記 | |
---|---|
法定相続分による相続登記 | |
必要な戸籍書類 | 取得できる場所 |
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍 | 出生から死亡までの本籍地の市区町村役場 |
亡くなった人の戸籍の附票 | 亡くなった人の本籍地の市区町村役場 |
相続人全員の現在戸籍 | 相続人それぞれの本籍地の市区町村役場 |
(兄妹姉妹が相続人となる場合)先順位の相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍 | 出生から死亡までの本籍地の市区町村役場 |
遺言による相続登記 | |
---|---|
必要な戸籍書類 | 取得できる場所 |
亡くなった人の死亡時の戸籍 | 亡くなった人の最後の本籍地があった市区町村役場 |
亡くなった人の戸籍の附票 | 亡くなった人の本籍地の市区町村役場 |
不動産を取得する相続人の現在戸籍 | 不動産を相続する人の本籍地の市区町村役場 |
戸籍の取得方法は以下のとおりです。
戸籍書類の取得方法 | |
---|---|
窓口で取得する場合 | |
取得できる人 |
|
準備するもの |
|
手続きの流れ |
|
郵送で取得する場合 | |
取得できる人 | 配偶者・父母、子、孫などの直系血族・代理人(要委任状) |
準備するもの |
|
手続きの流れ |
|
戸籍書類の取得方法 | |
---|---|
窓口で取得する場合 | |
取得できる人 | |
|
|
準備するもの | |
|
|
手続きの流れ | |
|
|
郵送で取得する場合 | |
取得できる人 | |
|
|
準備するもの | |
|
|
手続きの流れ | |
|
相続人の戸籍謄本については、現在のものだけで構いませんので、簡単に取得することができます。しかし、亡くなっている人の戸籍書類については、出生から死亡までのものが必要ですので、それぞれの本籍地で取得しなければいけません。
戸籍は、出生から死亡まで転居や結婚などによって数回変わることがほとんどですので収集が大変です。
それについては、以下にて詳しく解説します。
亡くなった人の戸籍関係書類について
相続登記の手続では、遺言による相続を除き、相続人を明らかにするため、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をさかのぼって取得する必要があります。
戸籍は結婚や離婚、転籍、法改正などによって変更されるため、亡くなった時点の戸籍だけ取得するだけでは足りません。
そのため、亡くなった人の戸籍書類については、以下の図のように、新しいものから遡って取得してください。
戸籍書類の見方
戸籍書類はあまり目にするものではないので、記載されている内容が複雑で分からない方がほとんどかと思います。
必要な情報を適切に得られるよう、確認しておくことが大切です。
実際の戸籍謄本の例を見ながら見ていきましょう。
上記のような最近の戸籍は読み取りやすく記載されていますが、明治から昭和に作成された古い戸籍は毛筆で手書きされ、読み取りにくいことがありますので注意してください。
戸籍で確認しておくべき代表的なポイントを紹介します。
【①戸籍の編成日・消除日】
編成日とは、戸籍が作られた日。消除日とは、戸籍が除かれた日です。
戸籍謄本は、編成日から消除日までの期間が記され、証明されています。
【②筆頭者、従前の本籍地、新しい本籍地】
筆頭者、従前の本籍地、新しい本籍地を確認し、それを元に次に取得するべき戸籍を確認しましょう。
戸籍書類を取得する際のポイント
戸籍書類を取得する際の3つのポイントを紹介しますので、参考にしてください。
本籍地や家族関係の情報は、個人情報にあたるため、戸籍関係書類を取得できる人は、本人と配偶者、それから両親、子供、孫などの直系血族のみと限られています。
上記以外の人が取得する場合には、委任状が必要です。
亡くなった人と相続人が同じ戸籍である場合には、亡くなった人と相続人の戸籍謄本は同じものになりますので、1通のみ取得すればOKです。
相続登記には、住民票や印鑑証明書などが必要です。市区町村役場で取得することができますので、まとめて取得しておくことで手間を省くことができます。
また、相続登記以外の相続手続き(預金口座の解約や保険金の請求)などにも同じ書類が必要ですので、複数取得しておくことをおすすめします。
固定資産税評価証明書を取得する
相続登記の申請の際には、登録免許税を法務局へ納める必要があり、登録免許税は固定資産税評価額から算出します。
そのため、土地や建物の「固定資産税評価額」が記載されている固定資産税評価証明書を取得する必要があります。
固定資産税評価証明書は、不動産がある市区町村役場または、市税事務所で取得できます。
固定資産税評価証明書は、毎年更新されますので、亡くなった年のものではなく、相続登記をする時点の最新年度のものを取得するようにしましょう。
なお、法務局によっては毎年届く固定資産税納税通知書で対応してくれることもあります。最新年度の納税通知書が手元にある場合には、法務局に納税通知書で問題ないか確認してみるのがよいでしょう。
戸籍書類の取得方法 | |
---|---|
窓口で取得する場合 | |
取得できる人 |
|
準備するもの |
|
手続きの流れ |
|
郵送で取得する場合 | |
取得できる人 |
|
準備するもの |
|
手続きの流れ |
|
戸籍書類の取得方法 | |
---|---|
窓口で取得する場合 | |
取得できる人 | |
|
|
準備するもの | |
|
|
手続きの流れ | |
|
|
郵送で取得する場合 | |
取得できる人 | |
|
|
準備するもの | |
|
|
手続きの流れ | |
|
相続登記に必要な添付書類を作成する
次に書類の作成をしましょう。
作成する書類は以下の2点です。
- ・相続関係説明図
- ・遺産分割協議
上記の書類は、手書き作成してもPCで作成しても構いません。自身にあった方法で作成してください。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続関係説明図
相続関係説明図とは、相続関係を書面にまとめた書類です。
必ずしも必要なものではありませんが、登記申請書に添付することで、登記完了後、戸籍謄本等の戸籍関係書類を返還してもらうことができます。
戸籍関係書類は他の相続手続きにも必要になりますので、作成しておくのが良いでしょう。
相続関係説明図は、取得した戸籍謄本に記載されている情報をもとに作成しましょう。
遺産分割協議書
亡くなった人が遺言書を遺していない場合、相続人全員で遺産分割協議をして、「誰が、何を、どの程度相続するのか」を決めます。
話し合いがまとまったら、その内容をもとに遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には必ず相続人全員の署名・押印が必要ですので注意してください。
なお、遺産分割協議は全員で直接話し合う必要はありません。手紙や電話、LINEによるやりとりでも問題ないので、都合のいい方法で行いましょう。
登記申請書を作成する
ここまで収集した書類を元に、登記申請書を作成しましょう。
登記申請書の書き方や必要書類は、相続方法によって異なります。以下ではケース別に説明していますので、参考にしてください。
- 遺産分割協議によるパターン
- 遺言書があるパターン
- 法定相続によるパターン
なお、以下はそれぞれのパターンにおける必要書類のチェックリストです。ぜひ印刷してご活用ください。
相続登記必要書類チェックリスト/PDFなお、登記申請書の雛形は法務局のHPからダウンロードできます。
法務局HP/不動産登記の申請書様式について遺産分割協議によるパターン
ここでは、以下の事例をもとに、遺産分割協議による相続の場合の登記申請書の作成方法を解説します。
亡くなった人 :父 山田 太郎
相続人:妻 山田 花子・長男 山田 一郎・次男 山田 次郎
父が所有していた自宅不動産について相続人全員で遺産分割協議を行い、長男一郎が単独で不動産を取得することに決めた。
- ・被相続人(太郎)の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- ・被相続人(太郎)の出生までのすべての除籍・改製原戸籍など
- ・相続人全員(花子・一郎・次郎)の戸籍謄本
- ・被相続人(太郎)の住民票(除票)または戸籍の附票(除附票)
- ・相続関係説明図
- ・遺産分割協議書
- ・相続人全員(花子・一郎・次郎)の印鑑証明書
- ・不動産を取得する相続人(一郎)の住民票または戸籍の附票
- ・不動産の固定資産評価証明書または納税通知書
遺言書があるパターン
ここでは、以下の事例をもとに、遺言書がある相続の場合の登記申請書の作成方法を解説します。
亡くなった人:父 山田 太郎
相続人:妻 山田 花子・長男 山田 一郎・次男 山田 次郎
父太郎が「自宅不動産を長男一郎へ相続させる」という内容の公正証書遺言を残していた。
- ・被相続人(太郎)の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- ・不動産を取得する相続人(一郎)の戸籍謄本
- ・被相続人(太郎)の住民票(除票)または戸籍の附票(除附票)
- ・公正証書遺言(公正証書遺言以外の場合は家庭裁判所へ検認の申立を行い、検認済証明書が付された遺言書が必要です。)
- ・相続関係説明図・不動産を取得する相続人(一郎)の住民票または戸籍の附票・不動産の固定資産評価証明書または納税通知書
法定相続によるパターン
ここでは、以下の事例をもとに、法定相続による相続の場合の登記申請書の作成方法を解説します。
亡くなった人:父 山田 太郎
相続人:妻 山田 花子・長男 山田 一郎・次男 山田 次郎
遺言書は残されていなかった。遺産分割協議をしないで法定相続分どおりに相続登記を行う。
- ・被相続人(太郎)の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- ・被相続人(太郎)の出生までのすべての除籍
- ・改製原戸籍など・相続人全員(花子・一郎・次郎)の戸籍謄本
- ・被相続人(太郎)の住民票(除票)または戸籍の附票(除附票)
- ・相続関係説明図
- ・相続人全員(花子・一郎・次郎)の住民票または戸籍の附票・不動産の固定資産評価証明書または納税通知書
登記申請書類の組み上げ
すべての書類が集まったら、提出に向けて書類を組み上げましょう。
組み上げの順番や方法は特に決まっていませんが、ここでは一般的な方法を解説します。
添付した書類を返還してもらうための準備
一定の準備をしておけば、提出した書類のうち以下の書類は返還してもらうことができます。
- ・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- ・被相続人の出生までのすべての除籍・改製原戸籍
- ・被相続人の住民票(除票)または戸籍の附票(除附票)
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・遺産分割協議書
- ・遺言書
- ・印鑑証明書
- ・不動産を取得する人の住民票または戸籍の附票
- ・不動産の固定資産評価証明書または納税通知書
相続登記に必要な書類は、他の相続手続きにも必要なものです。それぞれ取得費用がかかるものですので、お金を無駄にしないためにも準備をしておくことをおすすめします。
戸籍関係書類は、【相続関係説明図】部分で解説したとおり、相続関係説明図を提出することで変換してもらえますが、その他の書類については以下のような準備が必要です。
登記申請書類を組み上げる
ここまで集めてきた書類を、ホッチキスやクリップを用いて合綴しましょう。
順番に決まりはありませんが、以下の順番で組み上げるのが一般的です。
- ①申請書
- ②登録免許税分の印紙を貼った紙
- ③原本還付書類のコピー
- ④相続関係説明図
- ⑤必要な添付書類の原本
- ・①〜④をホッチキスで合綴する
- ・①②③の書類に書類に不動産を取得する人全員が割印をする
※収入印紙には消印する必要はありません。 - ・①から④の合綴した書類に⑤の書類をクリップで留める
法務局へ登記申請をする
必要書類の作成まで完了したら、不動産を管轄する法務局に申請しましょう。
申請する方法は以下の3つです。
- ・窓口で申請
- ・郵送で申請
- ・オンラインで申請
窓口で申請した場合、不備を指摘してくれるため、その場で修正することができるため、できるだけ法務局に行って申請することをおすすめします。
法務局が遠方である場合など、直接出向くのが難しい場合には郵送で申請しましょう。
なお、オンラインで申請するには、電子証明書の取得やPCの設定など手間や費用がかかるため、一般の方が行うのは現実的ではありません。
申請の流れは以下のとおりです。
窓口で申請する場合 |
---|
|
郵送で申請する場合 |
|
登記の完了を確認する
登記申請をしたら、完了を待ちましょう。
もし、書類に不備・不足があった場合には、申請後1~2週間後に法務局から連絡が来ますので、その指示に従って対応しましょう。
郵送で申請していても、法務局に直接出向いて修正をしなければいけないこともあります。
完了予定日までに連絡がないときは、不備がなく、無事登記が完了したということですので、法務局で完了書類を受け取りましょう。
窓口で以下のものを提示すれば、受け取ることができます。
- ・本人確認書類
- ・受付番号
- ・申請書に捺印した印鑑
なお、郵送で申請した場合、必要事項を記載していれば、完了書類が郵送で届きます。
完了書類は以下のものになりますので、不足がないか確認しましょう。
- ・登記識別情報通知
- ・登記完了書
- ・原本還付の依頼をしていた書類
登記識別情報通知は「不動産の権利証」で、大事な書類となりますので、金庫などで大切に保管しておきましょう。
次に、名義変更されているか、登記事項証明書を取得して確認してください。登記事項証明書は全国の法務局で取得できますので、お近くの法務局で取得しましょう。(取得方法は【登記上の所有者を確認する】部分で説明した方法と同じです)
相続登記の手続きはこれで完了です。
相続登記にかかる費用と税金
相続登記には、以下のような費用と税金がかかりますので、準備しておきましょう。
税金 | ||
---|---|---|
登録免許税 | 期限 | 登記申請時に印紙にて納める |
支払先 | 国 ※印紙の購入は郵便局などで可能 |
|
費用 | ||
戸籍謄本等の取得費用 | 数千円~3万円程度 | |
司法書士へ名義変更を依頼する手数料 | 相場3万円~10万円程度 |
ここでは、相続登記にかかる費用・税金について解説します。
税金(登録免許税)
相続登記には、登録免許税という税金がかかります。
相続登記における登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。例えば、不動産の固定資産税評価額が1,000万円の場合、4万円となります。
登録免許税は、印紙を登記申請書に貼り付けることで納付します。印紙は郵便局や法務局で販売されていますので、購入しておきましょう。
登記謄本等の取得費用
登記謄本などの相続登記の申請に必要な書類には、取得費用がかかります。
具体的には以下のとおりです。
- ・登記事項証明書:不動産1物件につき600円
- ・戸籍謄本類の発行手数料1通:500~700円程度
- ・印鑑登録証明書:500円程度
- ・郵便代:場所により異なる
不動産の戸数が多ければその分費用がかかります。
司法書士への依頼費用
司法書士へ相続登記の手続きを依頼した場合には、依頼費用がかかります。
不動産の数や、評価額によって変動しますが、依頼費用の相場は3~10万円程度です。
なお、グリーン司法書士法人では相続登記申請の手続きを3万円~承っております。無料の初回相談でお見積りすることも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
大阪相続相談所の費用のご案内不動産を相続したら必ず相続登記をしよう~相続登記をしない5つのリスク~
2021年時点で相続登記は義務ではありません。しかし、相続登記をせずに放置することで以下のようなリスクがあります。
- ・相続人が増加して話し合いが難航する
- ・相続人の一部が認知症などになって遺産分割協議ができなくなる
- ・公的書類の保存期間が過ぎて取得できなくなる
- ・売却などができない
- ・不動産の権利を失う可能性がある
2024年には相続登記が義務化されます。義務化後は、相続開始または相続開始を知った日から3年以内をに申請をしないと罰則が付くこととなります。
相続登記は、なるべく迅速に手続きをしましょう。
相続人が増加して話し合いが難航する
相続登記をしないと、相続する前の名義人のままとなります。そうすると新たな相続が発生し、以下の図のように相続人が増加してしまいます。
世代をまたげばその分、ねずみ算式に相続人が増えていってしまいます。
相続登記をするためには、相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。相続人が増えると、その全員で話し合いをして、全員の合意を得なければいけません。
関係性の薄い相続人の住所や連絡先を調べて、話し合いをするのは困難でしょう。
相続人が無闇に増えてしまう前に相続登記の手続きをしておきましょう。
相続人の一部が認知症などになって遺産分割協議ができなくなる
相続発生時には元気だった相続人が、数年後には認知症や病気などになってしまうことがあります。
認知症や病気などによって判断能力が低下した場合、遺産分割協議に参加することができません。
そのため、いざ相続登記が必要となり、遺産分割協議をしなければいけない場面でも、遺産分割協議ができないということになってしまいます。
判断能力が低下している人が遺産分割協議に参加するためには、「成年後見人」という代理人を立てる必要があります。
成年後見人の選任の申立には、数ヶ月を要する上、司法書士などの専門家に手続きを依頼すれば費用も余分にかかります。
また、成年後見人は相続権に基づいて相続を進める必要がありますので、法律に則った取得分を主張します。
最悪の場合、相続した不動産を相続人全員で平等に共有することとなる可能性もあります。
公的書類の保存期間が過ぎて取得できなくなる
公的書類には保存期間が定められています。具体的には以下のとおりです。
- ・戸籍(除籍):150年
- ・住民票の除票:5年
- ・除籍の附票:5年
- ・改製原戸籍の附票:5年
役所によっては、上記の期限を過ぎても保存してくれているところはありますが、保証はできません。
保存期間がすぎる前に、なるべく早めに相続登記の手続きをするようにしましょう。
売却などができない
不動産は、相続登記をしないと売却や、賃貸としての貸し出し、担保に入れて借り入れをするなどの活用ができません。
いざ不動産を活用したいと思ったときには、ここまで説明したような理由からスムーズに相続登記の手続きができず、思うように行かなくなってしまいます。
相続登記は、思うより時間のかかる手続きですので、早めに進めておくようにしましょう。
不動産の権利を失う可能性がある
遺産分割協議などで不動産を取得したとしても、相続登記をしていなければ所有権を失ってしまう可能性があります。
上記のイラストのように、遺産分割協議でBさんが不動産を取得することになっていても、Bさんが相続登記をする前にAさんが第三者に自身の相続持ち分を売却してしまうということができてしまいます。
仮に、AさんがCさんに不動産を売却して、Cさんが登記をしてしまうと、Bさんは不動産の所有権を主張できません。(民法177条)
このように、遺産分割などで単独で不動産を取得することになった場合、早期に相続登記をしないと、他の相続人に相続持ち分を売却されて所有権を主張できなくなる可能性があるので注意が必要です。
相続登記は司法書士に依頼するべきか
相続登記は、自身でも手続きすることはできます。
しかし、【相続登記の手続きの流れ】の章を見ても分かる通り、相続登記の準備は非常に大変です。
さらに、相続の事情によってはより複雑になり、一般の方では対応ができないケースもあります。
そのため、迅速かつ確実に相続登記の手続きを完了するためにも司法書士へ依頼することをおすすめします。
ここでは、司法書士に依頼するべきケースと、自身でも手続きが可能なケースについて解説します。
司法書士に依頼するべきケース
司法書士に依頼するべきケースは以下のとおりです。
- ①不動産の権利関係が不明確
- ②不動産の名義が被相続人以外だった
- ③不動産の売却予定などがあり、早急に手続きをしたい
①不動産の権利関係が不明確
- ・不動産の所有者が複数名いた
- ・亡くなった方が所有しているか分からない
など、権利関係が不明確な場合、該当する不動産が「誰のものか」「誰がどのくらい所有しているのか」を確認するため、過去に戸籍謄本をすべて確認しなければいけません。
この作業は非常に複雑で労力を要しますので、自身での手続きは難しいでしょう。
②不動産の名義が被相続人以外だった
- ・亡くなった方が親から相続した際に相続登記をしていなかった
- ・2つ以上の相続の時期が重なった
といったケースでは、不動産の名義が亡くなった方以外のものであることがあります。
このような場合には、必要書類が期限を過ぎていて取得できなかったり、旧民法に従う必要があったりと、複雑になる可能性があり、自身での手続きは難しいでしょう。
③不動産の売却予定などがあり、早急に手続きをしたい
売却予定があるなど、早急に手続きを進めたいこともあるでしょう。
自身で手続きをすると、必要書類の収集だけでかなりの時間を要してしまいます。
そのため、早期に手続きを進めたい場合には、専門家に依頼するようにしましょう。
自身でも手続きが可能なケース
以下のような条件が揃っている場合には、自身でも手続きが可能です。
- ①相続人が自身だけ、子供のみなどシンプル
- ②役所で必要書類を収集する時間を確保できる
- ③必要書類を自身で調べて作成することができる
相続人が「自身のみ」「配偶者と子供のみ」のような場合、比較的書類を集めやすく手続きも簡単です。
しかし、自身で必要書類や取得方法を調べて、1つひとつ収集できることが最低条件です。
公的機関は、基本的に平日の日中にしか空いていないため、その時間に時間を確保できなければいけません。
平日や日中にお仕事をされている方や、小さなお子さんがいる方は難しいかもしれません。
司法書士には書類の収集だけでも依頼することができますので、依頼を検討してみましょう。
よい司法書士を選ぶコツ
相続登記は司法書士の独占業務ですので、相続登記を専門家に依頼する場合には司法書士に相談することとなります。
しかし、司法書士にもそれぞれ対応体制や注力している分野があります。
相続登記の手続きを円滑に進めてくれるかどうかは、以下のポイントを参考に判断し、依頼する司法書士を選びましょう。
- ・相続に関する経験が豊富かHPで事例を確認する
- ・費用を明確に説明してくれる
- ・相談時にじっくりと、分かりやすく丁寧に説明をしてくれるか
- ・予約時や問い合わせ時に連絡が取りやすい
- ・専門家の視点から提案してくれる
- など
まとめ
相続登記は、2022年時点では義務ではありません。しかし、手続きをせず放置をすれば、様々なリスクを伴います。
また、2024年には相続登記が義務化される予定で、義務化されれば、相続登記を放置した場合に罰則が付くこととなります。
しかし、ここまで説明したように、相続登記の手続きは非常に大変です。
ご自身では難しいという方がほとんどではないでしょうか。
そのような場合には司法書士に依頼することも検討してみてください。
大阪相続相談所を運営しているグリーン司法書士法人では、初回の相談を無料で承っております。ご相談時に費用のお見積りをすることも可能ですので、ぜひ一度ご相談ください。
相続した不動産を売却する場合
相続した不動産の名義変更が完了し、売却を検討される方も多いかと思います。
相続した不動産の売却について、下記記事でわかりやすく解説しておりますので、ご参考ください。
相続した家の売却はどうしたらいい?手続きの流れや売却するコツを解説合わせて読みたい記事
一人で悩まないで!まずは無料相談!
0120-151-305
9:00-20:00[土日祝/9:00-18:00]グリーン司法書士法人運営
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人 の代表司法書士。
一般の方向けのセミナーの講師や、司法書士や税理士等専門家向けのセミナー講師も多数手がける。オーダーメイドの家族信託を使った生前対策や、不動産・法人を活用した生前対策が得意である。
- 【保有資格】司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
- 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」 著者/「はじめての相続」 監修
- 全国司法書士法人連絡協議会 理事