相続と遺言書なら大阪相続相談所
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
農地の相続手続きを行う際には、事前にしっかり検討する必要があります。
なぜかというと、農地には法律で様々な制限が課せられているため、相続したあとで負担になるから「やっぱり別の相続人に譲りたい」と思っても簡単に変更できない可能性があるからです。
また、相続人以外の第三者に対しては売却どころか贈与すらも簡単に行えず困るケースも多々あります。
このような理由から、農地を相続する場合は、事前にしっかり検討することをおすすめいたします。
メリット | デメリット |
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上記のメリット・デメリットを踏まえて、しっかり検討することが大切です。
ではこれより「農地を相続する方法」と「農地の相続を望まない場合の対処方法」を大阪相続相談所の専門家が解説いたします。
農地を相続したら「法務局での相続登記」と「農業委員会への相続届出」の2つの手続きを行います。「農業委員会への相続届出」には期限があり「相続を知った時から10か月以内」となっているので早めに手続きしておきましょう。
流れとしては「法務局での相続登記」を行ってから、「農業委員会への相続届出」となります。
農地の相続登記(名義変更)は、農地のエリアを管轄している法務局で行いましょう。
登記申請書に必要書類を沿えて提出すると、名義の書き換えを行ってくれます。必要書類を下記に記載するのでご参考ください。
必要書類 | 取得先 | 費用 |
---|---|---|
登記申請書 | 自分で作成するか、司法書士へ依頼する | 司法書士に依頼する場合は3~8万円ほど |
被相続人の戸籍附票 | 本籍地の市区町村役場 | 300円/1通 |
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 450~750円/1通 | |
相続人全員の戸籍謄本 | 450円/1通 | |
相続人全員の印鑑証明書 | 住所地の市区町村役場 | 300円/1通 |
農地を相続する相続人の住民票 | 300円/1通 | |
農地の固定資産評価証明書 | 農地所在の市区町村役場 | 300円程度/1通 |
遺産分割協議書 | 自分で作成するか、司法書士へ依頼する | >司法書士に依頼する場合は3~8万円ほど |
上記の必要書類は、遺産分割協議により相続登記を行う場合のなので、遺言により相続する場合は遺言書が必要になるのでご注意ください。
なお、遺言により農地を引き継ぐ場合は、先に農業委員会の許可を取らなければ相続登記できない場合もあるので併せてご注意ください。
また、農地の相続登記手続きには、固定資産税評価額の0.4%に相当する登録免許税がかかります。
戸籍の収集や登記申請書の作成をご自分で行うと負担になる場合もあるので、専門家である司法書士にご依頼いただくと手間が省けるので、一度ご検討ください。無料相談を行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
農地の相続も、基本的には自宅などの相続登記(名義変更)と、方法は同じです。
詳しい手続き方法は下記ページでご説明していますのでご参考ください。
不動産相続の上手な進め方と費用・税金のすべてを司法書士が解説
農地の相続登記が無事終わったら、次は市町村の「農業委員会」へ届出を行いましょう。(農地法第3条の3第1項)
農業委員会への届出は相続開始を知ってから10か月以内に行わなければならず、期限を過ぎてしまうと「10万円以下の過料」という制裁が加えられる場合もあるので、早めに行いましょう。
農業委員会は市町村に1つずつ設置されている地域が多いですが、中には複数存在する自治体や存在しない自治体もあるので管轄の農業委員会が不明な場合は、役所に問い合わせすれば教えてくれます。
届出の際には以下の2つの書類が必要なので用意しましょう。
必要書類 | 取得先 | 費用 |
---|---|---|
農地法の規定による届出書 | 管轄の農業委員会 | 無料 |
相続登記後の登記事項証明書 | 法務局 | 600円/1通 |
農地を相続したら相続税がかかる可能性があるので、いくら相続税がかかるのか確認しておきましょう。
ただし、農地を含む遺産総額が3,000万円以下の場合は相続税がかかる可能性がないため、相続税の計算を行う必要もなく、税務署への申告や納税も不要となります。
遺産総額が3,000万円以上の場合は相続税がかかりますので、相続税がいくらかかるのか確認してみましょう。相続税の計算方法をご説明しますのでご参考ください。
相続税は相続財産全体にかかるものなので、最初に全体にかかる相続税を算出してから各相続人に割り振って計算していきます。
具体的な計算手順は以下の通りです。
では具体的な例を使ってご説明したいと思います。
たとえば亡くなった母の遺産として農地が1,000万円、自宅が2,000万円、預貯金が3,000万円あり、合計6,000万円の遺産がある場合で考えてみましょう。
相続人は3人の子どもで、長男が1,000万円の農地と2,000万円の自宅を相続します。
農地 | 1,000万円 |
---|---|
自宅 | 2,000万円 |
預貯金 | 3,000万円 |
合計 | 6,000万円 |
①遺産総額は6,000万円です。
②相続税の基礎控除は4,800万円(3000+600×相続人数)なので、課税対象となる額は12,00万円です。
③基礎控除後の法定相続分は各400万円分(1200万円÷3)ですが、400万円にかかる相続税の税率は10%となるので1人あたり40万円となり、3人分を合計して120万円となります。
④長男は1,000万円の農地と2,000万円の自宅の合計3,000万円を相続するので、全体の2分の1を相続します。120万円×2分の1=60万円の相続税を負担する結果になります。他の兄弟はそれぞれ30万円の相続税を負担します。
農地の相続税を計算する際には、農地の評価をしなければいけません。
農地の評価方法は農地の種類によって異なり、農地は以下の4種類に分類されます。
農業地区域内の農地や、第1種農地や甲種農地に該当するもの
第2種農地や、それに準ずる農地
第3種農地や、それに準ずる農地
転用許可を受けた農地、市街化区域内にある農地、転用許可を要しない農地として都道府県致死の許可を受けた農地
純農地や中間農地の場合には「評価倍率方式」を適用するので、固定資産税額に一定の割合をかけ算して評価額を算出します。
市街地周辺農地の場合、「その農地が市街地農地だった場合の80%相当額」を評価額とします。
市街地農地の場合には「宅地批准方式または評価倍率方式」で算出します。
宅地批准方式とは「その農地が宅地だった場合の評価額から造成費を差し引いた金額」です。
市街地周辺農地や市街地農地の場合、相続税申告の際に「市街地農地等の評価証明書」が必要となります。
各地の評価倍率は、下記の国税庁の「評価倍率表」を使って確認できるのでご参考ください。
農地の相続税評価は宅地以上に複雑で専門知識が必要となるので、自分で計算すると誤ってしまう可能性があります。必ず税理士に依頼しましょう。
農地を相続した方が引き続き農業を行う場合、「相続税の納税猶予」を適用できる可能性があります。
相続税の納税猶予を受けたら、当面相続税を支払う必要はなくなります。その後、相続人が死亡したら猶予されていた相続税は免除されるので、農家が農地を相続するならぜひ適用を検討してみましょう。
次に納税猶予の要件をご説明します。
以下の条件のいずれかを満たしている必要があります。
以下の条件のいずれかを満たしている必要があります。
被相続人が農業をしていた、または特定貸付を行っていた農地で、以下の条件のいずれかに該当する場合です。
納税猶予の特例を適用すると「農業投資価格で評価した価額」を基準に相続税が計算され、農業投資価額は元の評価額より大幅に低くなるので相続税額を大きく下げることができます。
農地の相続税の納税猶予を受けた場合、相続人が亡くなるまでそのまま農業を続けていれば相続税が免除されます。しかし、途中で宅地などに転用すると特例の適用が打ち切られてしまい、猶予されていた相続税と利子税がかかってきてしまいます。
将来転用を考えているのなら、この制度は適用しない方が無難と言えます。
「実家が農業を営んでいるが、農業を継ぐ気はない。」
現代において、このように考える方は少なくないでしょう。また、東京や大阪などの都市に住みサラリーマンをされている方が、実家の農地を耕すことは物理的に難しいでしょう。
そして冒頭でもご説明したとおり、農地は一度相続してしまうと手放したいと思っても簡単に手放せない場合があるので、相続する権利があったとしても慎重に判断する必要があります。
本章では農地の相続を望まない場合、知っておくべき選択肢についてご説明したいと思います。
1つ目は農地を売却する選択肢です。
手続きとしては一度、相続登記(名義変更)をしてから、売却する流れになります。ただし原則として、農地は一定の要件を満たした農家にしか売れないので、買い手を見つけるのは簡単ではありません。また、自分たちで勝手に売買することはできず、農業委員会の許可をはじめとした複雑な手続きが必要となります。
確実に売却できるかどうかについて、しっかりと調査してから売却するか判断しましょう。
2つ目は農地以外に転用する選択肢です。
「土地の種目を農地から宅地へ」変更することを農地の転用と言い、住宅地として売買したり、農業以外に活用できるようにするものです。市街化区域の第2種農地や第3種農地は宅地に転用できるので、宅地にしてからさまざまな方法で活用したり売却したりすると良いでしょう。
宅地であれば、土地上に建物を建てて賃貸もできますし、宅地として売却すれば買い受け人も探しやすく高値で売れるでしょう。都市部なら駐車場などにして賃貸収入を得る活用方法も考えられます。
転用には農業委員会の許可が必要ですが、一回許可をもらったら農地のまま処分するよりずいぶん活用が楽になります。
ただし、農地の場所や地域により条件を満たさない場合、転用することは非常に困難になるため、転用できるかどうかについて、しっかりと調査してから判断することをおすすめします。
売却できない、利用できないとなれば、3つ目に検討するのが「相続放棄」という選択肢です。
しかし、相続放棄すれば農地の相続からは逃れられますが、農地だけではなく、その他の財産もすべて相続できなくなってしまいます。したがって他に価値のある遺産(自宅や預貯金など)があるならば、現実的には相続放棄できないケースもあるのでご注意ください。
また相続放棄できるのは基本的に「相続開始を知ってから3か月以内」という期限が定められています。農地を相続しようか迷っている間に相続放棄の期限が過ぎてしまうケースもあるので、相続放棄手続きをするなら急ぎましょう。判断が難しい場合や期限が差し迫っている場合は、司法書士がアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。
相続放棄について詳しく知りたい場合は、下記ページをご参考ください。またグリーン司法書士法人運営の相続放棄専門サイトもございます。
相続放棄のお手続き費用に関しましては、【分割払い】【クレジットカード払い】が可能です!
なぜなら、相続放棄手続きは定められた期間内に行う必要があるので、素早く手続きを行わなければならないからです。
農地を相続したくないけれど相続放棄はしたくないし、転用の条件も満たさない、かといって農地のまま売却するのも難しい状況ならば、4つ目の相続して「最低限の管理のみ行い放置する」という選択肢しかありません。
ただし最低限の管理は必要です。近隣に迷惑をかけないよう、雑草が伸びすぎたら除去なども必要ですし害虫などにも注意してください。特に農地上に納屋等の建物が建っていると環境悪化や倒壊、犯罪に使われるなどの危険が生じる可能性があるので、取り壊した方が良いので確認しましょう。
また、活用しなくても農地を所有し続けている限りは固定資産税がかかり続けます。
放置される場合、相続登記もしない方がおられますが、それはおすすめしません。
後々あなたが死亡して再度の相続が起こったときに、お子様やお孫さん達が困る事になります。相続登記だけはきちんとしておいてあげてください。
農地の相続は一般の宅地相続とは違い、特に農家でない方にとっては負担が重くなるものです。できれば生前から相続税の問題、相続後の活用や処分の方法を検討されることをおすすめします。
また農地を相続したら必ず「相続登記」と「農業委員会への届出」が必要なので忘れずに行いましょう。
登記が手間となる場合や、登記の方法が分からない場合は、司法書士が代行いたしますのでご相談ください。当法人は農地の相続に詳しい税理士とも提携しておりますので、税金関係についてお悩みの方もお気軽にお問い合わせください。
山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
一般の方向けのセミナーの講師や、司法書士や税理士等専門家向けのセミナー講師も多数手がける。オーダーメイドの家族信託を使った生前対策や、不動産・法人を活用した生前対策が得意である。